東京・神楽坂
「虎白」 小泉 瑚佑慈

日本料理にできることを、
常に考えて進化し続ける

日本料理の枠にとらわれない食材選びと独自の感性で、唯一無二の味わいを生み出し続ける店主の小泉瑚佑慈さん。その原動力となっているのは、お客さまの笑顔だ。コロナ禍で外食もままならない今だからこそ、〝食の楽しみ〞を日本中の人たちへ。日々の積み重ねが未来をつくると信じ、小泉さんは今日も真摯に前を向く。

柔らかい白ゴマの豆腐 だし醤油のゼリーとキャビアを添えて
フードプロセッサーにかけた生の白ゴマと出汁を漉し、カツオと昆布の出汁とくず粉を加えてトロトロの状態の白ゴマ豆腐をつくる。白ゴマ豆腐にはほとんど味をつけず、白ゴマの深い味わいをだし醤油のゼリーとキャビアの塩味とうま味、ゆずの香りで楽しむひと皿。七宝焼きの皿は、広瀬 陽作。

茶室を思わせるような趣きのある入口。

店で使う皿や器も、小泉さん自身が作家の個展に足を運んだり、骨董品店をのぞいたりして見つけてくるという。そんな小泉さんは、料理専門学校卒業後、八重洲の割烹で料理長をしていた石川秀樹さんに師事。独立する石川さんについて「神楽坂 石かわ」を創業当初から支え、2008年に「虎白」の店主となった。

東京・神楽坂にのれんを掲げて13年。「虎白」は今や、日本料理の名店として多くの人に知られる存在だ。三つ星に昇格したのは2015年11月。「連絡をいただいたときは、本当に嬉しかった。お客さまもとても喜んでくださいましたし、自分が信じたことをコツコツとやり続けてよかったな、と思いました」と小泉さんは言う。

昔も今も頭にあるのは、いかにお客さまに楽しんでいただくかということだけ。「おいしい」というひと言や満足げな笑み、出会ったことのない味を口にしたときの驚きの表情……。それらを糧に、小泉さんはアイデアを絞り、「虎白」ならではのおいしさを求めて走り続けてきた。「三つ星は、そうした日々の積み重ねの結果としていただくことができたものだと思っています」。
もちろん、その姿勢はコロナ禍でも変わることはない。

昨年の4月、5月は、緊急事態宣言によってお店を閉めた。そのとき考えついたのが、テイクアウトの折詰料理だった。「石川グループ全体でチームを組み、自分たちの手で折詰弁当をつくって、石川グループのホームページで販売するようにしたんです。この折詰料理は、一年以上が経過した今も、変わらず販売しています」。

また、コロナ禍は新たな商品開発のきっかけにもなった。「今までありそうでなかったものを、いろいろ考えてみたんです。結果、今は、出汁ベースのドレッシングやトリュフソース、『神楽坂石かわ』が創業当時からお出ししている鯛茶漬けの具、天ぷらセットなど、お品物のラインナップもかなり増えました。『神楽坂石かわ』や『虎白』が仕入れる、贅沢な食材をつかったお料理なども用意しています。神楽坂まで来ていただかなくても、ご自宅でおいしい料理を味わっていただける。お客さまに楽しんでいただけるのは嬉しいですね」。

できることをやっておけば次につながる、と小泉さんは言う。「大変なことも多いけれど、新しいことに取り組める時間がつくれたのはよかった」。9月と10月には、新たな店舗が1店ずつオープンし、石かわグループの店は全部で8店舗になる。「いいうねりの輪を広げていきたい」。師である「神楽坂石かわ」の店主、石川秀樹さんとともにグループを牽引する小泉さんは、きっぱり言い切る。

「5年前、10年前にやっていたことが、今をつくっている。これからも私は、お客さまに喜んでもらうために、日々、料理と向き合っていきます」。42歳の〝三つ星料理人〞に、気負いはない。

店内を彩る調度品や絵画は、陶芸家で書画にも造詣の深い高仲健一氏の作品。「虎白」の名も高仲氏の飼い猫の名前に由来するという。

熱した炭を皮目に直接当てることで、炭の香りが白アマダイにしっかりつく。「バーナーであぶったのとはまったく違う香ばしさが楽しめます」と小泉さん。最後に千切りにしたミョウガと花シソを盛り付ける。

「意外に思われるかもしれませんが、生のイチジクの甘みと白トリュフの香りは相性がいいんです」と小泉さん。

夏から秋にかけてが旬のイチジクに白トリュフを添えて
ゴマ出汁を敷いた上に、大きめにカットした生のイチジクを盛り、最後にスライスした白トリュフを散らしたシンプルな一品。イチジクの甘さと白トリュフの香りが絶妙なバランスで口中に広がる。器は小山厚子作。

白アマダイの炭落とし 秘伝のジュレとともに
熱した炭を直接皮目に当てた白アマダイと生ウニを秘伝のジュレとともにいただく、「虎白」のスペシャリテのひとつ。「おさしみは醤油とワサビで食べてももちろんおいしい。でも、皮目についた炭の香りをもっと楽しんでいただきたくて、考えました」と小泉さん。器は江戸切子を手がける堀口硝子のもの。

小泉 瑚佑慈さん

「もっと楽しい表現はないか、よい組み合わせはないか̶̶それを常に考えている」

虎白
東京都新宿区神楽坂3-4
TEL 050-3138-5225
17:00〜20:00
日・月・祝休

text: Shoko Yamauchi photo: Gaku Yamaya

本記事は雑誌料理王国318号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は318号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。