「同じ和牛でも赤身肉と黒毛和牛はまったく別物。どちらがいい悪いの話ではない。それぞれの素材の特質に合った調理方法を考えることが大切なんです」と石崎さんは言う。

近江牛のなかでもサシが細かいトウガラシ。それでも赤身肉に比べれば、サシは多い。そのかたまりを、石崎さんはマッサージし始めた。「肉の部位によっては、繊維をのばす感じでマッサージし、しまった肉をもみほぐします。近江牛の場合は、サシと肉を馴染ませる意味合いもあります」

確かに、マッサージをするうちに、サシと肉の境界線があいまいになっていく。マッサージをする前の肉と比べると、見ただけでも肉がやわらかくなっているのが分かる。

オーブンで加熱と休ませる作業を6回くり返し、中心までじわじわと火を入れていく。最後にフライパンでロティし、焼き色をつければ完成だ。時間が経つに従い、周囲に食欲をそそる香りが漂う。「近江牛は、脂の香りがいいんです。しかも、近江牛の脂は脂だけが溶け出すこともない。肉と一緒に焼き上がり、旨みを逃さないのも大きな特徴です」

外はカリッと香ばしく焼き上がり、内側はレアに近い状態。歯ごたえがあり、噛めば噛むほど旨みが増すのは、まさに赤身肉の特徴そのものだ。それでいて、さらりとした脂が口のなかで肉と絡み合う。味わいは、紛れなくイタリアンである。

「レストランは旨い料理を出すのが当たり前。だから料理人は、手間を惜しんではダメなんです」

部位
肩から腕にかけての部位

What’s トウガラシ?

トンビとも呼ばれる。肩の一部だが、肉質はモモ。内側に細かなサシが入っているが、味はサッパリ。赤身の王道といわれる部位。

マッサージをして繊維をやわらかくし、肉に火を入れる準備をさせてあげる。「肉にストレスをできるだけ与えない。それが私の考え方です」と石崎さん。

「加熱と休み」をくり返す。人間も急に熱い風呂に入れば体が驚く。でもゆっくり温まれば気持ちがよくなる。肉も同じ。リラックスした状態で火を入れる。

全体に細かなサシが入る。脂の香りがよいのも近江牛の特徴。

テール

テールの赤ワイン煮は、力強いひと皿。メス牛のテールなので小ぶりだが、脂がしっかりついていて、コクのある味わい。

Yuki oIshizaki

1963年、東京生まれ。16歳で料理の世界に入り、東京のイタリア料理店で経験を積み、1990年にイタリアへ渡る。フィレンツェやサンジミニャーノなどで修業。2002年にイタリアプロフェッショナル料理人協会から「イタリアマエストロ」に認定された。現在は、「リストランテ ラ・ヴィータ・エ・ベッラ」の総料理長を務める。

リストランテ
ラ・ヴィータ・エ・ベッラ伊豆高原

Ristorante La Vita e Bella
静岡県伊東市川奈1439-1
☎0557-44-4555
● 11:30〜14:00LO、17:30〜20:00LO
(カフェは10:30〜17:30)
●無休
●コース 昼3500円〜夜5800円〜
●50席
www.lavita-ebella.com/kawana/

本記事は雑誌料理王国245号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は245号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。