アットホームなトラットリアで出会う、極上の一皿

農産物で名高いエミリア=ロマーニャ州の丘陵地帯はレアな山の幸の宝庫。家伝の味で97年よりミシュランガイドの一ツ星をキープする老舗トラットリアで、地場食材を使った、洗練を極める家庭料理に出会う。

ボローニャの南西に車で約30分、うねうねとした山道を走って辿り着くザヴィーニョは、人口3000人にも満たない小さな村。その中心広場で、1934年より細々と経営を続けてきた「ダ・アメリーゴ」は、3代目オーナーシェフ、アルベルト・ベッティーニ氏の経営になり、厳選地方食材の郷土料理というコンセプトにより磨きをかけ、トラットリアながら、この地方一の名店となった。

彼は幼少期より、店隣のワインセラーの上階に住まい、日々の食事は家族揃って店でとった。「基本は郷土料理でも、そのレシピは我が家に伝わる家庭の味なのです」と語るアルベルトの自宅には、今でもキッチンがない。自分たちが納得のいく食材を求め、家族揃って食べる料理を作り続けてきた結果が、現在のメニューに昇華したのだろう。

探求の末に導かれた
素材の生きるシンプルなおいしさ

88年、27歳で本格的に厨房に入ったアルベルトが徹底的に取り組んだのが、地場食材の再開拓と伝統レシピの見直し。周りの丘陵地帯に散らばるプルニョーリ茸や白トリュフなど、地元名産の天然珍味や在来品種にこだわる生産者を訪ね歩く一方で、古来の文献も研究し、定番料理を見直したり、時にモダンにアレンジしたりと、弛まぬ研究を重ねて来た。

そうして紡ぎ出されたレシピは、実にシンプル。余分なものをそぎ落とし、時に2、3の素材を組み合わせただけなのに、滋味深いおいしさで満たされる。

家庭的なトラットリアで、ハイエンドな料理が楽しめる希有な一軒である。

食材ショップではレトロなラベルの自家製瓶詰め食品「ディスペンサ」が棚を飾る。国内外の有名食材店でも入手可能。トラットリアの2階の客席は一転してファンタジーな空間。ハリウッドの黄金時代に活躍し帰還した舞台美術家ジーノ・ペッレグリーニによるトロンプイユが圧巻。

“アメリーゴ2010”の卵、 白トリュフ添え
卵と白トリュフの定番コンビを、ジェラートの形に見立てたユニークな一皿。卵黄を中に仕込んだメレンゲをカップ型に成型したパルミジャーノに山盛りにし、150℃のオーブンで5分焼き、地元名産の白トリュフをたっぷりふりかけた逸品。ふわっ、とろりとした卵の繊細な食感が白トリュフの香りを引き立てる。

カルザ・ガッティのラルド巻き、菜園の季節の野菜添え。カルザ・ガッティとは、「猫の靴下」の意。ポレンタとインゲン豆のトマト風味をラルドで巻いた伝統料理。

トルテッリ入りのブロード。見た目はごくシンプル、でもその味わいは奥深い。セロリやタマネギ、丸ごとのメンドリ、豚腰肉、牛スネ肉等をじっくり煮込んだブロードは、やさしくふくよかなまさにマンマの味。

Alberto Bettini

1961年伊ボローニャ生まれ。服飾マーケティングで世界を回ったのち、88年から同店のオーナーシェフに就任。96年から発売開始の自家製食材ブランド「ディスペンサ」の人気も高く、2007年にはボローニャの食のコンプレックス「ビブリオテーカ」のプロデュースでも話題に。

Via Marconi, 14-16 Savigno Bologna
☎+39 051 6708326
●12:00〜14:15LO(土、日のみ)
●20:00〜22:00LO
●月、火休
●www.amerigo1934.it
●コース€34、€50、アラカルトあり

大平美智子(フィレンツェ)・文 仁木岳彦(ミラノ)・写真

本記事は雑誌料理王国197号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は197号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。