齢五十を超えても世の中知らないことばかり…。「四十にして惑わず」と孔子は言ったが、その境地に達するには相当な鍛錬がまだ必要なようだ。そんなことを先日、北広島町の高名な刀匠・三上高慶(貞直)氏をひょんなことから訪ねた際、強く感じた。

 『全日本刀匠会』会長で『全日本伝統文化後継者育成支援協会』の理事でもある三上氏の「日本刀鍛錬道場」があるのは、広島市内から車で約1時間の北広島町有田。道場横の自宅で刀剣製作の歴史や苦労、刀の持ち方、鑑賞のツボなどを教えていただき、目から何枚もの鱗(うろこ)が落ちた。

 鉄から鋼を作り、良質な日本刀を製作する過程の作業は複雑で刀匠の高度な技術が必要になる。三上氏も新庄高校卒業後、厳しい修行を経て刀匠となり、魂の込もった名刀を作り出してきた。ただ、後継者不足が深刻な問題になっているらしい。日本が世界に誇る伝統を守るには「心と懐(ふところ)の温かさが必要」というが、まさにその通りだろう。強固な意志とそれを下支えする資金が必要不可欠だが、そこには世間の高い認知度も必要だと思う。

 現在、中区の「頼山陽史跡資料館」で『現代刀の愉しみ』(今月27日まで)という企画展が開催されている。12日(土)には刀剣手入れ講習会もあるので、日本刀に興味のある方はぜひ立ち寄ってもらいたい。(中村正直)