「あきらめるな!切り替え!」。球場に響き渡る球児たちの声に、容赦なく照りつける太陽と空高く広がる入道雲。去年に引き続き担当した高校野球広島大会。目の前に広がる光景に「あぁ、今年も夏がやって来たな」と感じました。

 数々の試合を見て、深く印象に残っているのは、トーナメントを勝ち上がってくるチームには「野球を楽しんでいる」選手が多いということです。準決勝の祇園北対広島工大高での出来事。山陽や武田など力のあるチームを破り、勢いにのる祇園北に対し、1点差を追いかける広島工大高。九回裏の攻撃、2アウトまで追い込まれた場面で、打席には小田明星(ありせ)主将。なんとか打って出塁、得点したい場面で1球目は空振り。常人ならば、真剣な顔つきになってしまいそうな場面で、小田主将は“あえて”ベンチに笑いかけていました。「最後まで楽しむ」という強い気持ち、まさに、ある種の信念を感じた瞬間でした。結果はサードゴロ。広島工大高の反撃は及ばず、1点差で惜しくも敗退。

 「どんな時でも楽しむというのを主将として姿勢で示したかった」と悔し涙を流しながらも、しっかりとした口調で話してくれた小田主将。表情が硬くなってしまう場面で笑顔を保つことは、強靱(きょうじん)な精神力が必要。きっとたゆまぬ鍛錬で身に付けたものなのだろうと感じました。

 広島新庄と延長十二回の激闘を見せた西条農の村中大成主将や沖田琉弥投手も、帽子のつばの裏に「常笑」という文字を書き込んでいました。ピンチの時はその言葉を見て「笑う」ことを心掛けたとのこと。結果、素晴らしい活躍を見せてくれました。

 今、私は26歳。平均寿命をもとに人生を野球の試合で例えると、まだ二、三回の序盤。人生これからが本番。ピンチや苦しい時などどんな場面がやってきたとしても粘り強く最後まで楽しんでいこう。努力してきた自分を信じ、その場を味わい、勇気をもって楽しむという姿勢を高校球児たちから学んだ夏になりました。

八幡美咲(やはた・みさき)1995年1月23日生まれ。熊本県出身。20年4月に広島ホームテレビに入社。現在はニュースやスポーツを中心に活動。「フロントドア」ニュースコーナーや「5up!」ググっと。瀬戸内コーナーを担当。高校野球ダイジェスト番組ナビゲーター、サンフレッチェ広島応援番組レギュラーなども務める。日々広島の魅力やスポーツを深堀りしようと奮闘中。