広島市中心部で70年近く愛され続けている「上海総本店」の中華そば。深みのあるとんこつしょうゆのスープと強烈なにおいが特長。屋台を出発点に、長年にわたって広島のラーメン好きを虜(とりこ)にしてきた老舗店の秘密に迫った。



 被爆から6年が過ぎた1951年、復興の歩みが確かなものになった広島・八丁堀「福屋」百貨店の角に、中華そばを食べさせる屋台が登場した。2年後には屋台をたたみ、現在の店にほぼ近い八丁堀京口門公園近くに移転。それが「上海総本店」の原点だ。以来70年近く、変わらぬ味を提供し続けている。

 現在の二代目店主の藤本俊明さん(67)が店の歴史を語る。「戦後、私の祖父が製麺業を営むかたわら、麺を卸していた店に中華そばの作り方を教えていました。その祖父から私の父も教えを受けて屋台を開き、その後、店を構えたんです」。店の経営が軌道に乗った74年、九州の大学に通っていた俊明さんは父から店を手伝うように言われ帰広。中華そばの作り方を一から習い、親子で店を切り盛りするようになった。88年頃に現在の場所に移転。豚骨をベースにした独特のスープが評判を呼び、店は大繁盛。出前の注文も増えて多忙を極めた。

 個性豊かで味わい深いスープ。しかし、においは強烈だった。風が強い日は店の外まで漂い、好きな人にとっては食欲をそそり、嫌いな人には受け入れ難いものとなり、それが「上海総本店」の代名詞にもなった。豚の頭、拳骨など数種類の部位を砕き、その日の気温などに応じて5時間以上煮込み、これに自家製チャーシューを作る際に煮込んだしょうゆダレを合わせると、茶褐色をしたスープの出来上がり。見た目は濃いが、ギトギト感はなく意外にもあっさりとした味わいで、やや硬めの中太のストレート麺がよく絡む。

 「祖父が製麺業を営んでいたこともあり、開店から麺はずっと自家製。昔は近隣の県庁や合同庁舎からの出前の注文が多かったので、伸びにくい太麺を使っていました。父が亡くなった後も、しばらくの間は私が麺を打っていましたが、年齢のことも考え、ここ3、4年は製麺所にお願いして麺を作ってもらっています。麺は変わったけど、中華そばはうどんと違うから硬めにゆでなさいという先代の教えは今も守っています」。インパクトあるスープと、硬めの麺の何とも言えない絶妙なバランスが、常連客を惹きつける大きな理由なのかもしれない。

 一番人気は「中華そば」(700円)。肉厚の自家製チャーシュー、細もやし、メンマ、ネギが乗った広島ラーメンのオーソドックスなトッピング。客の約9割が注文する。チャーシューも先代から受け継いできた味で、スープと一緒に煮込んで脂を抜き、さらにベースとなるしょうゆダレに新しいしょうゆを足してコトコト時間をかけて煮込んでいる。「チャウシュウメン」(850円)、自家製ワンタンが乗った「ワンタンチャウシュウメン」(1000円)のファンも多い。

 「70年近く愛され、お店を支えてくれているのが長年通ってくれる常連さん。世代を超え、広島を離れた人も戻ってきた際には懐かしんで食べにきてくれる。父から店を引き継いで40年あまり。そろそろ自分も店をどう引き継ぐかを考えるようになった。今は次男の裕次が手伝ってくれているので、彼がどう味を残してくれるのか楽しみです」

 強烈でインパクトのあるスープとにおいで、広島のラーメン通をうならせてきた老舗。祖父が礎となって生み出した味を父から俊明さん、そして裕次さんへと4世代にわたって受け継いでいく。



 ◆住所 広島市中区八丁堀4の14

 ◆電話 TEL082・221・0537

 ◆行き方 広島電鉄・八丁堀電停から徒歩5分

 ◆営業時間 平日は10時30分〜16時と17〜21時(10月14日はまでは20時まで)。土曜日は10時30分〜16時、17〜20時。定休日は日曜・祝日。