ドライバーの飛距離を競うドラコン(ドライビングコンテストの略)。広島県廿日市市のドラコンプロ・岩田知真選手(36)は自己最長384ヤードの記録を持つトッププレーヤーだが、本職は「けん玉職人」。手掛ける作品は世界中から高い評価を受けている。「ドラコンでも世界の舞台で活躍したい」。異色の二刀流は驚異の身体能力を武器に、世界の高みを見据えている。

 普段、岩田選手が練習しているゴルフ練習場「ロイヤルゴルフガーデン」(広島市佐伯区)。打席に入った岩田選手がドライバーを振り抜くと、すさまじい衝撃音を残して、あっという間に白球は空のかなたへ消えていった。1ヤードでも高く、1ヤードでも遠くへ−。飛ばしに命をかけるのがドラコンプロだ。

 「ドライバーの芯を食った時の手に残る感触と、球が遠くへ飛んでいく光景を見ている時の爽快感は何ものにも代えがたい。日々の練習の成果が出て、どんどん飛距離が伸びていくことに達成感を感じます」

 岩田選手のヘッドスピードは65m/s。一般男子アマチュアの平均が38〜43m/s、米ツアーの飛ばし屋でも55m/sであることを考えれば、いかにその数字が規格外であるかがわかる。握力は両手とも72キロ。インパクトの瞬間、グリップをぎゅっと握る強さも飛距離を出すためには不可欠だという。

 ドラコンの世界に足を踏み入れたのは9年前。仕事の付き合いでゴルフを始めることになり、練習場で球を打つと、いきなりドライバーのフェースがへこんだ。学生時代はロッククライミングに打ち込み、国体の山岳競技では広島県代表に4年連続で選ばれた。その時に培われた身体能力がケタ違いのパワーにつながっている。周囲から「ドラコンをやってみたら」と勧められ、近所に住んでいたドラコン選手と一緒に練習するようになった。

 大会には年間約10試合ほど出場。通算20勝を挙げている。最長記録は5年前に姫路相生CCで行われた大会でマークした384ヤード。現在も同CCのコース記録になっている。今夏は「LDJドラコン選手権」の地区大会を制し、「日本一決定戦」に進出。予選もグループ1位で通過し、日本のトップ選手17人の1人に入った。

 本職は「けん玉職人」。父が木工会社を経営しており、自身も小学生の時から木工に携わってきた。広経大3年の時、けん玉発祥の地とされる廿日市市にけん玉の製造メーカーがなくなったため、市からの依頼を受けて製作、販売を始めた。

 現在は「(株)イワタ木工」の代表取締役。同社のけん玉ブランド「夢元無双」は芸術作品としても認知されており、インテリアオブジェとして米国や英国、フランスなど世界各国に出品。自動車のレクサスや高級腕時計のフランクミュラーなど他業種の一流ブランドとも契約を結んでいる。毎年夏に廿日市市で行われる「けん玉ワールドカップ」の発起人でもあり、優勝トロフィーを作成。日本の伝統文化を世界に広める役割を担ってきた。

 今やけん玉はスポーツ界にも進出。フィギュアスケートの羽生結弦や元女子レスリングの吉田沙保里さんも集中力を養ったり、足腰を強化するため取り入れていた。「私も大会の時はけん玉をします。手の震えがないかとか、足の力の入り具合など体の状態を確認するんです」と岩田選手。けん玉の振り子のイメージや加速ポイントもスイングと通ずるものがあるという。

 ドラコンとけん玉の二刀流で目指すのは世界の舞台。「けん玉では世界のトップとして認知していただいていますが、ドラコンではまだ世界の舞台で戦ったことがない。日本でトップになって世界大会に出場することが目標です」。未知の領域である「400ヤードも視野に入っている」と話す岩田選手。大台をクリアすれば、一気に世界が見えてくる。

 岩田知真(いわた・かずま)1982年11月8日生まれ、36歳。廿日市市出身。広経大卒。身長177センチ、体重83キロ。代表取締役を務める「(株)イワタ木工」(廿日市市)は、熊野化粧筆(メイクブラシ)の軸の製作、販売をメインに、けん玉ブランド「夢元無双」の製作、販売なども手掛けている。