【五輪に愛され続けた男・野村忠宏28】(前編)

 つい4年前まで「主役」だった男が、観戦者となって北京五輪の会場に座っている。野村忠宏は、「4年に1度の特別な空気を味わいたかった。外から観る五輪はどういう景色だろう」と率直だった。

 不思議なことに、似た言葉を4年前のアテネで聞いている。しかも同じ境遇に立った人物から。

 当時、夏季五輪では陸上のカール・ルイス、同円盤投げのアル・オーター(ともに米国)、セーリングのパウル・エルブストレーム(デンマーク)と3人しか達成していない五輪4連覇(現在は水泳のフェルプス=米国、レスリングの伊調馨の5人)を狙ったレスリング、グレコローマンのアレクサンドル・カレリン(ロシア)だ。「霊長類最強」と称され、130キロ級ではソウル、バルセロナ、アトランタと3大会連続で金メダルを獲得。しかしシドニー五輪決勝で4連覇の夢が途絶えた。野村が3連覇を達成したアテネで、レスリング会場へと向かう関係者バスのなかでカレリンを偶然見かけ話を聞いた。