【五輪に愛され続けた男・野村忠宏31】(中編)

 トップアスリートの引退では常に「引き際」に注目が集まる。よく「ボロボロになるまで」と表現されるが、ボロボロとは何を指すのか、ファンやメディアに示すだけではなく、後に続くトップ選手たちにも勇気を与える道標のような引退でもあった。

 「引退を決断するときは、体がボロボロになるのか、心がボロボロになるのか、それとも両方なのか、と考えて来ました。でもここまで続けてようやく分かりました。心がボロボロになる事は絶対になかった、と」

 引退後はスポーツ取材を基盤として、多くの競技、トップアスリートとの交流を通じて独自の活動を展開。一方では、高校生たちの部活動支援、祖父、父と3代継がれてきた道場「豊徳館」にも足を運ぶなど、柔道界を支える草の根での普及活動も続ける。海外からの指導の依頼も絶えない。