【阪急を支えた左腕・梶本隆夫9】(後編)

 いつものようにポーカーフェースでスイスイと…。ただ、そのあと梶本らしい優しさが出る。次に打席に入ったのは投手の皆川。誰もが連続三振は10に伸びると思った。

 1球目は空振り。2球目は真ん中のストレート。皆川がバットを振るとセンターフライとなった。

 その瞬間、スタンドの南海ファンから大きな拍手が送られた。「凡打に終わってスタンドからあんな拍手をもらったのは初めて」と皆川は苦笑いだ。

 不名誉な連続三振記録を投手が9でストップさせたのだからスタンドからの大拍手も当然だった。

 マウンドの梶本はその時、どんな気持ちだったのか。

 「9つも三振を取って打席に投手を迎えたということで、気が少し緩んだのかもしれませんね」

 翌年、東映の土橋正幸投手が9連続奪三振を達成した。2人が今も日本記録保持者となっている。

 梶本は20年間のプロ生活で歴代6位の通算2945三振を奪っている。

 本来、温厚な性格。けんか腰で打者と勝負するようなタイプではない。持って生まれた素質で生きていく。

 「勝負の世界で長く生きていくうえで、好人物すぎる」との声もあった。

 それでも20年間もの長いマウンド生活を終え「いい思いをさせてもらった」と後悔など全くなかった。(敬称略)