【阪急を支えた左腕・梶本隆夫10】(前編)

 高峰三枝子といえば俳優で、歌手でもあった美人。「湖畔の宿」や「南の花嫁さん」などの曲を大ヒットさせたことでもよく知られている。

 その高峰は大の野球好きで、阪急ブレーブスのファン。なかでもお気に入りの選手が梶本隆夫だった。

 当時の後楽園球場に年間指定席を確保。阪急の試合には嬉々として観戦に訪れ、声援を送った。

 大女優が姿を見せると、当然のように周囲は大騒ぎ。その一挙手一投足が注視された。

 まだ、梶本が独身時代の話。ロマンスに発展しても決しておかしくなかったが、ファンと選手との垣根を越えることにはならなかった。

 「大女優とのお付き合い?めっそうもないことです」

 当時のマスコミに梶本はそう答えている。真面目で口数も少ない青年。以降女性関係で浮名を流すことは一切なかった。

 海の向こうでは大リーグ、ヤンキースの主砲ジョー・ディマジオと女優マリリン・モンローが結婚−離婚をして世間を騒がせ話題になったが、梶本・高峰の場合、そうならなかった。