かつて、北朝鮮製の商品は質が低いと、同国の消費者からも背を向けられていた。すべてが悪いというわけではなかったが、良いものは輸出用に回され、一般庶民が手にすることはあまりなかった。

その結果、市場はここは中国かと見紛うばかりの中国製品だらけとなってしまった。金正恩党委員長は、輸入病(何でもかんでも輸入に頼る傾向)の打破と、国産品の生産、愛用キャンペーンに乗り出し、消費者からも好評を得た。ところが、そんな評判を下げてしまうような出来事が平壌で起きている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

商売で新義州(シニジュ)を訪れている平壌市民によると、平壌市内の各区域の国営食料商店では毎月下旬、味噌、醤油などが、市場価格よりも遥かに安い国定価格で供給される。市民は、国から受け取った食品カードを持参して購入する。それぞれ1人あたり200グラムの購入が可能だが、問題は味だ。

「党の特別な配慮で供給される食品だが、質が徐々に悪くなり、もはや口にしないほうがマシと思うほどひどくなった」(平壌市民)

以前と比べると露骨にまずくなり「もはや味噌なのかモジュなのかわからない」として、買わなくなってしまったという。

トウモロコシ、ドングリ、おがくずなどで作った密造酒を「ノンテギ」というが、「モジュ」はその酒粕で、酸味が強くてそのままでは食べられないため、小麦粉に混ぜてパンにしたり、豚のエサにしたりする。

そんな醤油、味噌を製造しているのは市内の船橋(ソンギョ)区域にある平壌基礎食品工場だ。責められる立場の工場だが、それなりの言い分もある。

別の平壌市民によると、国は工場に対して「平壌市民に毎月味噌、醤油を供給せよ」との命令を下したが、材料を供給せず自力更生、つまり自主的に調達することを求めた。工場は副業地(工場が管理する畑)で栽培したり、中国から輸入したりして賄ってはみたものの、到底命令された量の生産はできない。いくらむちゃな命令とは言え、背けば処罰を受ける。

そこで工場が考え出したのは、製品の「差別化」だ。

市場で販売する味噌、醤油はコメや大豆を使った最高級品にして高値で売る。その利益で購入したトウモロコシで、市民に供給するための味噌、醤油を製造するというものだ。

ちなみに、最高級品にあたる平壌コメコチュジャンは7000北朝鮮ウォン(約91円)で、パッケージも味も韓国有名ブランドのコチュジャンに似せてある。

また、ビニール袋に入ったコチュジャンは300グラムで5000北朝鮮ウォン(約65円)、味噌は1キロ1万2000北朝鮮ウォン(約156円)で売られている。

一方、市民に供給する味噌と醤油は、作っても作っても儲けが出ないので、上から指示された量を満たすだけのものだ。当然のことながら、まずい。

市民供給用と同じものを市場に卸したとしたら、全く売れないだろう。そうなれば、運営資金を自主的に調達することを求められる国営企業にとっては死活問題だ。企業経営の論理を考えると、決して間違ったやり方とは言えない。

しかし、平壌市民の間では、同じ工場で作っているのになぜこんなに差が出るのかという非難の声が強い。

平壌に暮らしていた脱北者のキム・ヨン(仮名)さんは「地方とは異なり、平壌市民は毎月味噌、醤油、卵4つを国定価格で供給されている。しかし、味噌と醤油の質がひどいため、これらを利用するのは市場で良質なものを買う余裕のない貧しい人だけだ」と述べた。

「商店で売っている味噌は質がぜんぜん違う。味噌を運送する人が水を混ぜるからだ。ズルズルしていて、夏にはカビが生えるのでよく煮込んで(殺菌する)」

材料が国から配給されたらされたで問題が発生する。輸送や製造に関わる人が、生活のために横流ししてしまうのだ。