北朝鮮国営の朝鮮中央通信は1月30日、中国・武漢を中心に感染が拡大中の新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、「新型コロナウイルス感染症の危険性がなくなる時まで衛生防疫システムを国家非常防疫システムに転換する」と伝えた。

また、同通信は別の記事で「各指揮部では国境、港湾、飛行場などの国境通過地点において検査検疫事業により徹底的に取り組み、外国出張者や住民に対する医学的監視と検病検診をもれなく進めている」と伝えた。

公開処刑を活発化

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が英国およびインド外務省の情報として伝えたところでは、「平壌と中国の北京・遼寧省・瀋陽などの間を行き来する高麗航空の往復路線や、北京と丹東地域などを結ぶ国際列車などがストップすることになった」という。北朝鮮は、2014年の「エボラ出血熱流行」と2003年の「SARS(重症急性呼吸器症候群)流行」の際も平壌と北京を結ぶ航空路線を止めた。

一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮が1月28日から中国との貿易を全面的に一時停止する措置を取ったと、伝えている。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋はRFAに対し、「もし中国の武漢のようにウイルスが(北)朝鮮に広がれば、防疫体制がしっかりしておらず、医薬品も不足しているわが国は、死の恐怖に包まれざるを得ない。感染した住民が集団で倒れでもしたら、金正恩体制そのものが大きく脅かされる」と語っている。

ただ、対外貿易の9割以上を中国に依存する北朝鮮にとって、中朝貿易の一時停止は体制を土台から揺るがしかねないリスクを秘めている。そうでなくとも北朝鮮当局は、一昨年の末頃から公開処刑を活発化させている。経済制裁の影響による経済難で乱れた治安を、恐怖政治で抑え込む意図があるものと思われる。


だが、新型肺炎による混乱が重なれば、国民の意識にどのような変化が生じるかわからない。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1月29日、新型肺炎への対策は「国家存亡に関わる重大な政治的問題」であるとする記事を掲載したが、この表現は決してオーバーなものではないのだ。