北朝鮮では10日の時点で、新型コロナウイルスの感染者は報告されていないが、先月末に死者が発生したとの情報がもたらされた。

デイリーNKの平壌の高位情報筋によると、平壌に住む50代女性が発熱と咳を訴え、新型コロナウイルスへの感染が疑われるとして、隔離治療を受けていたが、改善しないまま先月27日に亡くなった。

ところが保健当局は、一般的な「急性肺炎」で亡くなったとの死亡診断書を発行した。検査が行われたかどうかは不明だが、情報を隠蔽した疑いが浮上している。

北朝鮮は先月28日、新型コロナウイルスの国内での感染拡大を恐れ、中国との貿易を全面的に停止する措置を取った。また、外国人観光客の受け入れも先月22日から中止している。

しかし、貿易の9割以上を中国に依存する北朝鮮は、このままだと国が持たない状況となりうる。そうでなくとも北朝鮮当局は、経済制裁の影響に乱れた治安を抑え込むため、一昨年の末から公開処刑を活発化させている。

亡くなった女性の遺体は、平壌の南西郊外にある楽浪(ランラン)区域の五峰山(オボンサン)の施設で火葬された。一般的な肺炎で亡くなったのならば、火葬や埋葬などは遺族の手で行われるはずだが、すべてが終わった後に骨壷が手渡されただけだったことから、遺族は女性が新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったのではないかと疑問を抱いた。これがもとになり、「実は新型肺炎で亡くなった」という噂が広がりつつあるということだ。

この女性を含め、新型コロナウイルスにより亡くなったと思われる人は平壌だけで3人いるというのが情報筋の証言だ。40代中盤の男性が今月初頭に、中国に留学していた20代の学生が最近亡くなっている。

2人は、発熱と咳など新型コロナウイルスによる肺炎と疑わしき症状を見せ、平壌市万景台(マンギョンデ)区域にある結核治療を専門的に行う第3人民病院に移送され、隔離治療を受けていた。

情報筋は「新型コロナウイルスは空気感染し、結核と似たような症状を起こす」という理由から、2人が隔離施設のあるこの病院に移送されたとのことだ。ただし、新型コロナウイルスは空気感染ではなく飛沫感染だ。

この病院には3人以外にも、感染が確認された18人が隔離治療を受けているが、全員が「感染が疑われる患者」に分類されている。保険当局は亡くなった留学生が感染源となったと把握している。

北朝鮮保健省のソン・インボム局長は2日、朝鮮中央テレビに出演し「わが国で新型コロナウイルスによる感染症は発生していない」と述べている。10日の時点で、北朝鮮において新型コロナウイルスの感染者が発生したとの発表はないが、中国に隣接する新義州(シニジュ)や義州(ウィジュ)で原因不明の高熱で死者が出るなど、ウイルス上陸が疑われる情報が伝えられている。

また、韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)は、北朝鮮国内には7人の感染者がおり、軍は金正恩氏の緊急命令を受けて冬季訓練を全面中止したと報じている。

北朝鮮で高官を務めた経験を持つ脱北者は「新型コロナウイルスの流入を防ぐために総力を尽くしている状況で、感染者や死者が発生したと明らかにすれば、当局の予防医学的観察に間違いがあったことになるため、公開を躊躇っている可能性がある」とし、もし発生したのなら、隠蔽せずに世界保健機関(WHO)に早急に報告し、国際社会に治療、拡大防止に援助を求めるべきだと述べた。