デイリーNKの調査では、北朝鮮の首都・平壌の市場で1ドルは先月11日に8470ウォンで取引されていたが、27日には7410ウォンとなった。新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)の市場でも、2週間で大幅なウォン高になっている。

当局が外為市場に介入したからと思われるが、その方法は、通貨を売買するものではなく、非常に荒っぽいやり方をしている。両替商の逮捕だ。

デイリーNKの内部情報筋は、当局が個人による多額の外貨の売買を禁止する、つまり両替商を取り締まるための1118常務という組織を立ち上げたと伝えた。

国家保衛省(秘密警察)、人民保安省(警察庁)、そして人民委員会(道庁、市役所)の遵法課の人員からなるこの組織は、捜査・逮捕権限が与えられ、各地域の保安署(警察署)に登録された両替商を監視し、ドルの取り引きを確認すればその場で逮捕する。

北朝鮮の刑法は105条〜108条で、許可なく外貨を両替、使用することを禁じている。最高刑は労働教化刑(懲役)5年だが、貨幣改革(デノミネーション)で経済が大混乱に陥っていた時期には、外貨を使ったという理由だけで見せしめで処刑されたケースもある。

両替商は、取り締まりを逃れるために、常日頃から地域の保安署にワイロを渡すなどして、良好な関係を築いている。そのため、1118常務は、容疑者を居住地ではない任意の地域の保安署に勾留する権限を与えられている。処罰に手心が加えられることを避けるためだ。

1118常務が立ち上がったことを受けて、多くの両替商は市場に出向かず、嵐が過ぎ去るのを首をすくめて待っている。両替ではなく別の目的で市場を訪れたとしても、1118常務にしつこく尾行され、どんな因縁をつけられるかわからないからだ。

しかし、「上に政策あれば下に対策あり」のお国柄だけあって、両替商は客から携帯電話で注文を受けて、別の人にドルを届けさせる形で、取り締まりの目を逃れている。ただし、詐欺やおとり捜査のおそれもあるので、信用のある馴染みの客との取り引きに絞っているとのことだ。

一方で北朝鮮当局は、米ドルの偽札の取り締まりも強化している。元々は、政府の指図で製造が始まった偽札だが、公債発行の影響でドルの流通量が不足したスキを狙って、偽札を流通させようとする者がいると見ている。偽札が増えると、一時的には為替が安定するが、長期的に見ると貨幣そのものへの信頼度がさらに低下し、北朝鮮ウォンの価値がさらに暴落する可能性がある。

そもそも、北朝鮮ウォンの価値が下がり、市場に介入せざるを得ない状況となったのは、政府が深刻な財政難の打開のために、17年ぶりに公債を発行したことに端を発している。

北朝鮮が先月発行したのは、国家機関公債と国家貿易公債の2種類の公債だ。全体の6割に当たる国家機関公債は、通貨の流通量を抑制するため、工場、企業所、機関の間での決済で現金の代わりに使わせている。

また、残りの4割の国家貿易公債は、外貨タンス預金を国庫に吸収するために、トンジュ(金主、新興富裕層)や幹部に「押し売り」している。

ところが、発行元が信用のない朝鮮中央銀行で、17年前に半ば強制的に買わされた公債がまともに償還されず、大損をした記憶が生々しいことから、多くの富裕層がドル買いに走り、ドルが不足すると見た人々はより高値で買い付けている。

「トンジュは外貨での公債購入には消極的だ。誰がドルと紙くず(公債)を交換するものか」(情報筋)

実際、当局は外貨の吸収が思ったように進んでいないと内部評価を下しているもようだ。さらに多くの外貨をかき集めるために、商人が市場の入口にある国家外貨取引所や国営銀行で米ドルを北朝鮮ウォンに両替すると、市場管理費を3割減免する制度を行っている。

一方で、もう一つの目的である通貨流通量の抑制には効果があったとの評価だ。

こうした中、北朝鮮当局は公債発行の効果を評価するための1次財務総和を計画していることがわかった。情報筋は「現在、朝鮮中央銀行は、各機関、企業所の財政課の公債計画の50%を発行した。残りの50%は、財政総和の結果と第3四半期までの公債の取り引きの状況を見てから、発行する計画を縮小するか拡大するかを決めると思われる」と述べた。