北朝鮮の平壌で、先月5日から12日まで開催された朝鮮労働党第8回大会。国民が制裁・災害・コロナの三重苦に苦しめられている中での大会で、いかなる政策が示されるか注目された。

デイリーNKは、党大会の感想を探るために、北朝鮮国内の複数の情報筋を通じて幹部にインタビューを行ったが、それに続けて、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)と、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)在住の一般市民へのインタビューも行った。

地方住民の党大会への反応は極めて冷淡なもので、国に期待するどころか、その存在を生活向上の障害物とすら考えている実態が浮き彫りとなった。

ー党大会で金正恩氏が総書記に推戴されたが、住民の反応は?

新義州市民Cさん:元帥様(金正恩氏)は今回、総書記になったが、その前は委員長だった。しかしこの肩書は紛らわしい。農場の管理委員長も委員長、職盟(朝鮮職業総同盟)の初級委員長も、少年団の分団委員長も委員長。世の中には一体これは何なんだという話もあった。しかし、多くの人は呼び方や職責よりも党の政策のほうが重要ではないかと言っている。庶民に働き口や配給を与えられないのなら、少なくとも国から逃げ出さなくとも食べていけるようにするのが、最重要問題ではないかということだ。

会寧市民Dさん:今まで、どう呼ぶかについて相当苦労してきた。だから、細胞委員長より細胞秘書という言葉が使われることが多かった。庶民は総書記でも委員長でもまったく関係もないと言っていて、朝鮮労働党委員長より総書記のほうが聞こえもよく、位も高そうに見えると言う人もいた。

ー今まで金正恩氏に頻繁に随行していた趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏が超スピード出世して、(金正恩氏の妹の)金与正(キムヨジョン)氏は重要なポストを得られなかったが、住民の反応は?

C:よく知らない。地方の住民は、テレビで趙甬元という人が元帥様に同行しているのを見て、信任が厚いのだろうと言っている程度だ。金与正同志は、元帥様と同等ではなくとも、白頭の血統の下に生まれた将軍様(金正日総書記)の娘だ。一般人の中で最高位にいるのだから、肩書など重要ではない。

D:ほとんどの人は趙甬元が当然の地位を占めたと言っている。金与正同志については、今まで「雌鶏歌えば家滅ぶ」(女性がでしゃばってはいけないの意)と言っていたが、本当に家が滅ぶことになったようだと言っている人がかなり多かった。そんな世論が中央党(朝鮮労働党中央委員会)に伝わったのではないか。その一方で、肩書がなくとも重要政策には直接関与できるだろうとも言っている。

ー今回の党大会では、前回の経済発展5カ年戦略は失敗を認め、国家経済発展5カ年計画を示したが、住民の反応は?

C:地方の人々は、計画遂行のために家を出た一家が、餓死して帰ってきたのを見た。国が配給をくれるのか、現実的な生活費をくれるのか。男性の散髪料金は8000北朝鮮ウォン(約112円)ほどするのに、その3分の1ほどのカネ(職場の月給)を受け取るために毎日必死で出勤しているというのに…。

地方の人々にとって、もはや計画などないほうが現実的だ。その日暮らしをしているというのに。それでも国から逃げ出さずに堪えて生きていこうとしているのに、聞こえてくるのは計画遂行のために党の検閲(監査)機関が数多くできたとかいう話だ。これでは庶民が苦しむだけだ。

D:否定的に見ている人が多い。また5年も痛めつけられるのかと心配している。「勝手に生きていろ」と言われた方がまだマシだという反応が一番多い。また、100日戦闘やら、80日戦闘やらに追い立てるのなら、(国は)何もしないことこそが人民を助けることだ。お上は計画の発表しかせず、それをやらせられる庶民は死にそうだ。人々は、庶民は汗水を搾り取られるだけだと非難している。

ー5カ年計画の基本は自力更生と自給自足だが、果たして可能か?

C:可能ではない、などと言えば殺される。保衛部(秘密警察)や安全部(警察署)に捕まってでも、違法なことをしてでも、家族を養わなければならない。社会主義を守ることと何が違うのか。国は何もしてくれないが、さすがにわれわれを殺そうとはしてないだろうとは思うが、癪に障る。われわれはただ生きていこうとしているだけだが、生真面目な人は商売ができず、種銭のない人は物乞いでもして生きていくようなことが続いている。

D:伝染病(コロナ)のせいで中国との貿易ができず、ないないづくしなのに、自力更生を叫んで計画を発表さえすれば達成できるとでもいうのか。これからの5年間、庶民ばかりが死ぬ思いをさせられると考えると今から心配だ。自力更生などすでにやり尽くしているから、もうやれる余地はないと思う。そんな状況なのに、自力更生などできないことなど自明ではないか。

ー地域の特性に合わせた支援を示唆して、セメント1万トンなどと言った具体的な目標も示した。

C:家を失った人々が、あてもなくさまよった挙げ句に餓死したり病死したりする。納屋のようなあばら家や崩れかけの家に住む人々が良い暮らしをするには、マンションや住宅を多く建てなければならないというのは正しい。資材さえ提供してくれれば、地方の人々は自ら進んで建てる。ともかく統制はやめてほしい。

D:元帥様は検徳(コムドク)鉱山へ行って、現実を目の当たりにして非常に衝撃を受けたようだ。それで地方人民の生活に関心を持つようになったようだが、セメント1万トンを保証すると言っても何が変わるのか。道庁所在地に住む人はまだマシだが、農村では衣食住や文化生活のレベルは原始時代をようやく抜け出した程度の有様だ。

セメントを出すという話を聞いた地方の人々は、鼻で笑っている。どん底の生活をしている地方の人々に何の助けになるのか。支援はいいから、せめてあれこれ(税金外の負担を)出せと言わないでくれたらと思う。(国が進める)建設事業のたびに、全国的に支援しろとせっつくことさえしなければいい。

ー党大会では非社会主義、反社会主義現象防止について改めて強調され、厳罰が予想される。

C:首領様の回顧録にもこう書かれている。昼は敵の世の中、夜はわれわれの世の中。セリフを丸覚えするほど毎日革命映画ばかり見せられると、新鮮でリアルな映画を見たくなり、世の中で何が起きているか知りたくなる。それなのに、そんなものをを見れば反動だ、反社会主義だ、非社会主義だなどと言って捕まえるというから、これからは気をつけようと思う。

D:伝染病のせいで市場で商売もできず、行商して暮らしていた人たちは死ぬ思いをしている。そんな状況なのに、非社会主義、反社会主義をするなというのは死ねというのと変わらない。いくら非社会主義、反社会主義(根絶)を叫んだところで、虚しく響くだけだ。

今の社会はもはや社会主義でもないのに、何が反社会主義、非社会主義だ。今の暮らしそのものが非社会主義だという人も少なくない。社会主義社会で生きていけないのがわれわれの現実だ。われわれの住む社会のどこが社会主義なのかと、非難しつつ呆れている。

ー党大会では国防力強化を主な成果として掲げ、今後も核開発を続けると宣言した。

C:国が滅ぶことは望んでいない。しかし、軍需工業を少しだけ(民生に)回せば、人民生活向上のための製品を大量に作れるのではないかと思う。国がまともな製品を大量生産して供給してくれれば、密輸をしなくても、監獄に行かなくても済む。平安北道の人々は皆が皆、商売や密輸をしようとしている。人民が全員餓死して空っぽになった国を守る武器を作ってどうするのか。誰のための武器なのか、国は説明できるだろうか。

D:核兵器は人民に何の得にもならないばかりか、核兵器のせいで制裁を受けて貧しくなっているではないか。核兵器のせいで苦しみ続けていることは、大抵の人が知っている。自衛的国防力やら核強国やら言うのを聞けば歯ぎしりするという人もいる。国にそれだけの財貨があるのなら、少しでも人民の生活のために回してくれれば良いのにと激しく非難する人もいる。

ー住民の米朝関係への期待は?

C:米国は狼だと教える教科書の内容が変わらない限り、米国は同じ空の下で生きていけない敵で、制裁の元凶だという国民の考えは変わらないだろう。党大会で言っていたように、譲歩しないというのに何を期待しようか。

D:シンガポールでの首脳会談の後、住民の間では米国との関係が改善すれば、暮らしがよくなると期待に満ちた声が多く聞こえた。しかし、ハノイでの首脳会談の後、やはり米国は手強い、トランプ(前大統領)は元帥様を弄んだだけだという話が広がった。国も米国との関係を改善しなければ、経済が発展させられないことくらいわかっているだろう。

しかし、問題は核兵器を絶対に放棄しないだろうという点だ。核を放棄せずに米国と関係を改善するのは最終目標で、今後米国の新政権とどこで合意点を見出すかが鍵になる。核の放棄でプレッシャーをかけてくるなら、関係改善の見込みはなく、交渉をしたところで核の放棄だけはしないことは確実だ。

ー党大会では南北関係改善は韓国政府の態度にかかっていると言われた。

C:仕事をして給料を払ってもらう(労働力派遣の)形で、南朝鮮(韓国)と協力できれば良いと思う。お互いに足りていないものを補いながら生きていこうというもので、南朝鮮に逃げようという考えではない。南朝鮮の人たちと話しても思想的に惑わされず、赤旗精神さえ守り抜けば良いと思う。お互いが良い暮らしをできればいい。そうやって、多くの人が仕事を得て、コメも買えて腹いっぱい食べられるようになる日がくればいい。

D:住民が北南関係の改善を望むのは、本当に統一が1日も早くされてほしいという望みからだ。実際に住民は(韓国企業が多数進出していた)開城(ケソン)工業地区のようなものが増えればいいと言っている。

ー今回の党大会では「人民大衆第一主義」「以民為天(民を以て天と為す)」「人民のために働く党」など、人民を最優先するという理念を掲げた。

C:人民を天のように仰ぐという意味の以民為天だが、人民を捕まえて閉じ込めて殴って涙を流させる保衛部、安全部は、どこか他の国の機関だとでも言うのか。ただでさえ生活が苦しかった昨年、人民をどれほど軽視したか。以民為天を叫ぶなら、まずはそこを正してからだ。

D:前にも「人民大衆第一主義」「以民為天」と騒ぎ立て、今も人民の利益を最優先にすると言っているが、そんなことを信じる人民は誰一人いない。元帥様は人民を愛していて、中間の幹部が問題だという人もいるが、それは元帥様の悪口を言えないからだ。元帥様が一度でも人民のために献身的になったことがあるのか。ただ、何か変わるかもしれないから少し見守ってみようという人もいる。

ー党大会では党員の規律違反、不正行為の監督、信訴(不正行為の訴え、内部告発)処理機能を強化したが、住民の反応は?

C:保衛部、安全部、検察所、軍が特殊性を云々して人民をねずみのように捕まえることからなくしてほしい。最近は息子や婿が保衛部や安全部にいれば、家族まで保衛部、安全部に入る。国から与えられた職責を乱用するのは、党と大衆を離反させることにしかならない。何よりも(党大会決定事項の)執行が重要だと思う。

D:党幹部の不正行為が度を越している今、これ(党大会決定)だけは多くの住民から好評だ。幹部が恐れるものも必要ではないか。しかし、元帥様直々の方針でなければ、すべて見逃してしまうほどザルだ。ワイロ漬けの社会で、誰が清廉潔白に検閲(監査)をするというのか。ともかく、今の殺伐とした空気の中で、多くの幹部が用心しているのは確かだ。