長引くコロナ鎖国による経済難が、北朝鮮の首都・平壌の治安を悪化させている。窃盗事件が多発し、安全部(警察署)の事件処理能力を超えるほどの状況となっている。

配給の遅配、欠配が頻繁になり、市場の営業も制限される中、カネに困って犯罪に走る者が増えているようだ。そんな中、母子が無残に殺害される事件が発生したと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは、平壌市の西城(ソソン)区域。先月初めのある日、帰宅した夫が30代の妻と4歳の娘が倒れているのを発見、すぐさま分駐所(派出所)に駆け込んだ。二人は刃物で刺され、即死状態だったという。

安全員は聞き込みを行い、マンションの警備員から「夕方に見知らぬ男が家に入っていくのを見た」との証言を得て、捜査を行った。当初は夫を容疑者扱いしたが、最終的には女性の友人の弟が真犯人であることを暴き、逮捕に至った。

被害女性は、10年にわたってヤミ両替商を営み、相当な財産を築き上げていた。北朝鮮では、富を見せびらかすような行為は、防犯上はもちろんのこと、政治的にも危険な行為だ。ヤミ両替は違法行為で、安全部(警察署)や保衛部(秘密警察)から営業黙認と引き換えにワイロをせびられたり、作為的な法執行で全財産を奪われたりしかねない。

だが、犯人は姉を通じて、被害女性がカネを持っていることを知っていたようだ。そして事件当日の夜、カネを奪うため、両替目的を装って女性の家を訪れた。そして平然と両替を行なった直後に女性を刃物で刺し、それを見て大声を上げた娘も刺したというものだ。

刑法、刑法附則で故意的重殺人罪、個人財産強盗罪の最高刑は死刑。家族が最高幹部であるか、強力なコネでもない限り、死刑になることは避けられないだろう。

最も豊かな平壌で犯罪が相次いでいるのなら、地方の治安状況は推して知るべしだ。当局は犯罪捜査より、韓流取り締まりの方に力点を置いていることから、コロナ鎖国が解除され、生活難の解消がなされない限り、犯罪は増え続けるかもしれない。