ロシアで働いていた北朝鮮労働者11人が脱北し、先月31日に韓国に入国した。

デイリーNK情報筋は、極東のウラジオストク、首都モスクワ、そこから南東480キロのところにあるタンボフの建設現場で働いていた北朝鮮出身の労働者11人が、現場から脱出して北朝鮮当局が差し向けた追手を振り切り、第3国を経て韓国に入国したと伝えた。

彼らは最初からまとまって動いていたわけではなく、3つの建設現場で別々に働く中で、2人、4人、5人がそれぞれ脱出。アジトや難民収容所にとどまっていた。韓国政府は人道的措置として彼らを受け入れることにしたと情報筋は伝えているが、同国政府は脱北者の入国について、一部の例外を除き公式には確認しない姿勢を取っているため、詳細は不明だ。

脱北の動機について情報筋は、外の社会を経験したことで意識が変化したことを挙げている。

「海外に来てまず最初に感じたのは、国に裏切られていたということ」(脱北した労働者)
「祖国(北朝鮮)がわれわれに教えていた北朝鮮式社会主義がこの世で一番いいということが嘘だということにすぐに気づいた」(同)
「ここ(ロシア)に来て、24時間電気が灯る明るい世界で暮らし、汽車に乗って(車窓から見た風景は)木のない朝鮮の山とは異なり、木材資源が非常に多いことに感嘆した」(同)

もうひとつは、上納を要求される党資金(忠誠の資金)のプレッシャーだ。汗水たらして働いても、それに応じた収入が得られないため、自然に北朝鮮に対する幻滅を感じるようになったという。労働者1人あたりの上納金の額は、1ヶ月に4万ルーブル(約5万8000円)。1日に16時間働いても、上納金を納めるのに精一杯で、カネを稼いで故郷に錦を飾るなど夢のまた夢だ。さらに当局は、上納金のノルマが4ヶ月以上達成できなければ、強制帰国させた上で、山奥の農村で革命化(下放)処分を下す方針を示している。

「カネもないのに故郷にどうして帰れようか」(同前)
「われわれは祖国の労働の道具に過ぎない」(同)

また、新型コロナウイルスなどによる病死、事故死したり、絶望から自ら命を絶ったりする者もいたが、遺体が火葬され散骨される様子を見て衝撃を受けた者もいたとのことだ。火葬も散骨も、北朝鮮の人々にとっては抵抗感のあるものだ。

また、コロナの国内流入を恐れる北朝鮮当局が、ロシアで働く労働者がコロナに感染しても帰国を一切許さなかったことも、国への失望に繋がったようだ。

今回の11人脱北の件との関連は不明だが、昨年末にハバロフスクだけで10人の北朝鮮労働者と幹部が逃亡している。北朝鮮当局は、懸賞金を掛けて逮捕に乗り出したが、その結果については伝えられていない。

情報筋は、当局がロシアや中国で働く自国労働者への監視を強化するだろうが、こんな暗鬱な状況で、生活や労働環境などの大きな改善がない限りは、今後も脱北が続くだろうとの見方を示した。