北朝鮮の金正恩総書記は15〜18日に行われた朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会で、「農業部門で昨年の台風の被害のため穀物生産計画を未達成したことによって現在、人民の食糧状況が緊張している」と述べ、国内で食糧難が起きていることを認めた。

金正恩氏はその原因が台風にあるとしたが、当局は農村での労働力不足が穀物生産計画の未達成の原因と見て、都市部の若者に「嘆願」と言う名の下に、強制的に送り込んでいる。機械化が遅れている北朝鮮の農業にとって、人手不足は致命的であることは確かだ。

そんな中、穀倉地帯の黄海南道(ファンヘナムド)で1万人を越える女性が農場に送り込まれたと、韓国の聯合ニュースが北朝鮮の朝鮮中央放送を引用して報道した。

朝鮮中央放送は、1万3700人の女盟員(朝鮮社会主義女性同盟のメンバー)が農業部門に「嘆願」する美風が発揮されたと報じた。女盟は、労働力のみならず、物資の支援も行い、宣伝扇動運動を展開しているとも報道した。

女盟には、朝鮮労働党の党員ではない、30歳以上の街頭女性(専業主婦)が加入が義務付けられているのだが、それを考えると、今回の「嘆願」で多くの夫と家族が路頭に迷うことになるだろう。それはなぜか。

北朝鮮で専業主婦と言えば、経済面で一家を支える大黒柱だ。男性が、ろくな給料も払わない国営企業、機関への所属、出勤することが法的義務とされている一方で、女性には必ずしもその必要がない。そんな立場を利用して、市場で商売をして現金収入を得て、家族を食べさせているのだ。

そんな「大黒柱」を失えば、一家が困窮するのは火を見るよりも明らかだ。「嘆願」の強制に際しては、様々な形で抵抗したり、免除してもらうためにワイロが飛び交ったことは、今までの事例を考えると、想像に難くない。

女性たち同様に、「嘆願」の形で農村、炭鉱などに派遣された都会出身の若者たちも、除隊後に農村に「集団配置」された元兵士たちも、すきを見て次々に逃げ出している。女性たちも派遣早々、なんとかして貧しい農村から抜け出して、都会にある自宅に戻る機会を狙っていることだろう。