国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)は今年7月に発表した報告書で、北朝鮮では今年86万トンの穀物が不足する見込みだと指摘している。また、米国農務省の経済調査局は、同月の報告書で、北朝鮮の総人口2590万人のうち、63.1%にあたる1630万人に必要な量の食糧が供給されない見込みだとしている。

国家による非現実的な農業計画、非効率な集団農業、インセンティブ制度の導入不徹底、流通時の横流し、コロナ鎖国による営農資材の不足の深刻化など、北朝鮮の食糧不足の原因は枚挙にいとまがなく、改善するにもどこから手を付ければいいのかわからないほどだ。

食糧をめぐるトラブルも後を絶たないが、そのような状況下でも、あるところにはある、のが世の常だ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、道内のレストランにおいて食糧が無駄遣いされている件が槍玉に上げられたと伝えた。

今月1日に行われた第3四半期定期事業総和(総括)会議では、道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)は道内のレストランにおける食糧の無駄遣い現象を正式案件とした。

この日の会議で道党は、食糧難が深刻化する状況なのに、各レストランは金儲けに目がくらみ、党の政策とはかけ離れた行為を行っていると指摘し、これに対する闘争(キャンペーン)を繰り広げると強調した。これは、秋の収穫が本格化する直前で、食糧を無駄使いする現象を取り締まるということだ。

道党は、金儲けのために争って料理の品数を増やし、食糧を無駄使いし、国が定めた計画分以上に食材を使って料理を作り、高い値段を付けて販売するのは非社会主義的行為(社会主義にそぐわないと当局が考える風紀を乱す行為)であると指摘した。

また、レストランは営利行為であるにもかかわらず、あたかも国家計画の一部であるかのように振る舞って客を呼び寄せ、宴会を開かせたり、認められていない料理を提供したりするなどして、国家的衛生防疫事業にも深刻な影響を与えたとも批判した。

このような状況を放置していた道内19の給養管理部門の行政責任者を監督不行き届きと批判し、見せしめとして解任した。

さて、レストランが料理を客に提供することが食糧の無駄遣いになるとは一体どういうことなのか。

各地に存在する国営レストランは、勤め先の職場や人民班(町内会)を通じて割り当てられた「飲食予備票」という一種の食券を持った客に、国定価格で料理を提供することになっている。これが国家計画分だ。

しかし、市場価格とかけ離れた国定価格を受け取って料理を提供したところで、まったく儲からない。そこで、富裕層をターゲットにして、外貨建ての市場価格を受け取り、本来のメニューにはない豪華料理を提供することで、利益を得るのだ。

当局は、不足する外貨を国内からかき集めるために、このような手法を使っていたのだが、食糧不足が深刻化するや、無駄使いだとして攻撃を始めたということだろう。

一方、この日の会議では、共同農場が密造酒を醸造し、都市部に販売する行為が根絶できていない件も指摘し、8つの農場の管理委員長に警告処分を下した。国営工場以外での酒の醸造は穀物の無駄遣いとして禁じられており、10年以上に渡って取り締まりが行われてきた。だが、予算不足に苦しむ農場にとって貴重な現金収入となるだけあり、法の目をかいくぐって続けられている。

結局、どちらも充分な運営予算が国から得られないためがために行われていることだ。予算を配分せずに資金調達の方法を禁じれば、運営そのものが立ち行かなくなるだけだ。とっくの昔に崩れ去った計画経済という建前にしがみつき、当たり前の現実を否定しようとしているのだ。こんなことがうまくいくわけがなく、ほとぼりが冷めれば、元の木阿弥となるだろう。