6月末の朝鮮労働党政治局拡大会議で崔相建(チェ・サンゴン)党書記兼科学教育部長が失脚させられたことを巡り、北朝鮮の一部の幹部たちの間で、上層部に対する不満が渦巻いているという。

同会議の途中で退席させられた崔氏はその後、一度も公開の場で姿が確認されていない。

北朝鮮において、会議の途中での退席は多くの場合、逮捕・拘束を意味する。その後に待ち受けているのは残虐な公開処刑や、生きて出ることの難しい管理所(政治犯収容所)送りだ。

同氏が失脚した理由は当初、保健分野を担当する党科学教育部長として、新型コロナ対策の防疫活動やワクチン、治療薬開発に失敗した責任を問われたのではないかと推測された。しかしデイリーNKの内部情報筋によると、そうではないという。

「コロナ問題が発生して、わが国では法的課題として取り扱われる学校教育の教育綱領の執行にも問題が生じた。それにもかかわらず、党の教育政策を受け持つ責任者が教育綱領の執行のための戦略を適切に講じず、革命課業の遂行で重大な問題が発生したと見なされたのだ」

要するに、コロナ対策で休校措置が取られたため、学校カリキュラムが正常に消化されなかったのに、崔氏ら担当部門が手をこまねいていた、ということだ。情報筋によると、こうした理由で崔氏が粛清させられたことに対し、彼の部下たちからは、「学生たちを集めることを禁じながら、教育綱領を執行しろというのは、現実的に不可能な要求だ」との強い不満が出ているという。

「教育部門の幹部たちは、崔相建は言いがかりの犠牲になった、との反応を見せている。コンピュータもタブレット端末も普及していないのに、遠隔で授業を行えるはずもなく、訪問授業をするにも教師が足りない。こんな状況でどのような方法があるのか、との主張だ」(情報筋)

また、幹部たちの間からは「問題があるならば、党からも何か方案が提示されるべきだが、どのようにすべきか議論して党中央に報告しろというだけだ。結局、党中央にも対策がないのではないか。こんなことではやっていられない」との声も上がっているという。

実際のところ、北朝鮮のようにカネもモノも足りない環境下では、現場の責任者たちが様々な場面で機転をきかせ、あるいは英断を下すことなしに、社会は回って行かない。

しかし、思い付きや言いがかりで幹部を粛清する金正恩総書記の恐怖政治は、そうした中間幹部を委縮させたり投げやりにさせたりしている。その結果、どうにかこうにか回っている北朝鮮社会の歯車が、完全に狂ってしまう可能性もあると筆者は考えている。