北朝鮮の国是と言っても過言ではないほど強調される「自力更生」。だが、現実は正反対だ。市中で売られているモノのうち、生鮮食料品を除けば約9割が中国製と言われているほど、中国への依存度が高い。

北朝鮮は2020年1月から、コロナ対策として国境を封鎖し、貿易も停止しているが、それにより深刻なモノ不足、食糧不足に陥っている。だが、北朝鮮は相変わらず自力更生を力説するばかりだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党両江道委員会(道党)は今月初旬、道内の貿易機関のイルクン(幹部)を道党庁舎の会議室に集めて、現状における貿易部門に望む党の方針を伝達した。

会議で党幹部は、時期ごとに異なる党の貿易政策を正しく認識し、現実に合わせてビジネスを行うよう要請した。

また、「中央から地方に至るまで秩序整然とした経済管理体系を打ち立てて、自立的民族経済の土台で経済を活性化することが、今の貿易イルクンに下された課題だ」との言及があった。

これは、輸入にのみ依存するのではなく、いかにしてでも国内で人民生活消費品(生活必需品)の需要を満たし、それに合わせて経済を活性化することが非常に重要だという意味であるとのことだ。

その一方で、生活必需品の生産に必要な資材と設備を国内ですべて賄うのは不可能だとして、改善が必要だとの言及もあった。

自立的民族経済のための自力更生だからといって、すべてを自給自足するわけにもいかず、貿易は国内で不足するものを解決する補助的なものでなければならないと強調した。

道党は、両江道など国境に接する地域の経済は、貿易と密輸に依存してきたせいで、コロナ鎖国によりすべての生産工程がストップし、人民が生活苦に陥る事態が発生しているとしつつ、「貿易機関は、再び国境が開くかもしれないという妄想に浸り、2年もの間泣き言ばかり言って、国境が開きさえすればすべてが解決すると騒いでいる」とも指摘。

「党はそんな考えを見抜いている」として、「貿易機関は自立経済の補助的な役割を担うものとして、行政管理体制を全面的に改善し、イルクンに対しても思想教養(教育)を行わなければならない」と主張した。

道党はさらに、「今年上半期までに、道内の貿易機関の幹部事業と人員操動(いずれも人事異動の意)を行い、隊列を再整備する」と宣言。これを行う幹部部(人事部)、労働課は具体的な状況を党に徹底的に報告せよと指示を下した。

要するに「自立経済」の大口は叩きつつも、国内だけではやっていけない現実は認識しているが、それでもやはり貿易が主になっている今の経済体制はよろしくないというところだろう。

ただ、農業だけ見ても、肥料は国内生産分だけで需要を賄えないのはもちろん、そもそも肥料の原料すら、輸入に頼らざるを得ないのが実情だ。両江道の経済は、そうしたものを中国から輸入することで潤ってきたのだ。北朝鮮経済にとって貿易は、補助的役割ではなく核心中の核心なのだ。

「国境が開きさえすればすべてが解決する」と考える貿易機関は、妄想に浸っているのではなく、現実を理解しているのだ。もちろん、一般国民もある程度はわかっている。妄想に浸っているのは、むしろ自立的民族経済、自力更生を叫び続けている朝鮮労働党の方だろう。