昨年12月、北朝鮮の両江道(リャンガンド)で、韓国映画を見ていた初級中学校(中学校)の生徒が逮捕され、反動思想文化排撃法に基づき、14年の労働教化刑(懲役刑)という容赦なき判決が下された。

非合法に流入する韓流コンテンツを「人民の精神を蝕む社会主義の敵」と見なす北朝鮮当局は、隠れて視聴したり売買したりしたらどのような目に遭うか、見せしめの重罰を相次ぎ下している。

中には同法に基づき、処刑された例すらある。

ただ、韓流コンテンツの主な消費者層である大量の若者を政治的・肉体的に葬ることには、北朝鮮当局にも「やり過ぎ」との戸惑いや反省があるようだ。最近になり、取り締まりを緩和する動きが観測されている。

平壌と黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党法務部は今月4日、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」という提議書を中央に提出。金正恩総書記が直接サインする「1号批准」を受けた上で、8日から全国の司法機関、安全機関に指示が下された。

反動思想文化排撃法に違反したとして摘発される人が急増している中で、未成年までを思想犯にするわけにはいかないと党法務部の判断があったと情報筋は説明している。

「少年の90%が外部文化に接しているという全国安全機関の調査に基づき、現在の現実を反映した少年対象処理方針を立てる必要があると内部的な結論が下された」(情報筋)

新たに通達された、反動思想文化排撃法に違反した少年の処理規定は「4.8批准課業」と呼ばれ、次のような内容からなっている。

○過去2年間に反動思想文化排撃法に違反した14歳以下の少年の法的処理事項を個人文件(個人の経歴、思想などをまとめた文書)から削除し、現在捜査、拘禁対象となっている者はすべて釈放すること

○14歳以上17歳未満の青少年のうち、反動思想文化排撃法に違反しすでに裁判を受けて法的処理を受けた場合を除き、2022年4月8日以降、捜査、拘禁中の者に対しては拘禁解除し、社会的教養処分を下すこと

○14歳以下の少年期に反動思想文化排撃法に違反し、教養処分を受けた者が、17歳以上の青年期に再犯した場合には加重処罰すること

今回の措置について当局は、太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)を迎え、党が下した配慮だと宣伝している。実際の思惑は不明だが、◇処罰がむしろ幼いころから体制への反抗心を植え付ける結果を生みかねない◇労働鍛錬隊や教化所(いずれも刑務所)が収容能力を超過している――などの理由が考えられる。

本来、少年に対しては、成人と同様の法適用は行われないことになっているが、この反動思想文化排撃法の運用に関しては指針が下されておらず、捜査機関により適用がバラバラだった。

韓流の主消費層がこの年代であることから、捜査機関の点数稼ぎのターゲットとされ、次から次へと逮捕される事態が起きていたが、今回初めて指針が下されたことで、そのような状況に改善が見込まれると思われる。実際、勾留されていた違反少年は釈放されているという。

ただ、未成年なら許されても、青年になってから同じ間違いを犯した場合、未成年の時の分まで合わせて処罰される。

北朝鮮でも少子化が進んでおり、幼い少年たちに「反動」の烙印を押すことは、国益に反するとの判断があるのかもしれない。