北朝鮮の最高人民会議常任委員会は14日、平壌にある錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の周辺一帯の和盛(ファソン)地区を、正式な行政単位としての「平壌市和盛区域」とすることを決定した。

同区域では2月から、1万世帯住宅建設事業の建設工事が進められている。同事業は朝鮮労働党第8回大会で示された「平壌市5万世帯住宅建設構想」と党中央委員会第8期第4回総会の決定に従ったもので、同月12日の着工式には金正恩総書記も参加した。

北朝鮮で住宅(マンション)建設事業は、特権階級や富裕層にとって最大の利権ビジネスだ。

北朝鮮で住宅建設を行うには、担当する機関がトンジュ(金主、新興富裕層)から投資を募り、資金を集めた上で建設を行う。投資の見返りとしてマンションの部屋を受け取ったトンジュは、販売して利益を得る仕組みだ。

建設計画の立案は国が行うが、実際は整備する世帯数を示すだけで、設計を含めた建設のすべては軍の建設部隊に一任される。建設部隊の責任者、指揮官、朝鮮労働党のイルクン(幹部)は、国の承認を得ないまま、マンションの構造を変えて部屋数を増やす手法でカネ儲けを行ってきた。

これが平壌市内だけで5万世帯分も行われるとなれば、相当に巨大な利権となる。その恩恵に浴することができるのは、抗日パルチザン出身者の家系を中心とする「赤い貴族」や朝鮮労働党、そして軍などの高位幹部、あるいは彼らをバックに付けた新興富裕層だ。

しかし利権が巨大だけに、様々な「事件」も起きる。

約1年前、平壌郊外の兄弟山(ヒョンジェサン)区域の市場の近くの堤防で、公開銃殺が行われた。デイリーNKの現地情報筋によれば、処刑されたのは軍の建設部隊である7総局の政治委員で52歳のリュ少将だ。

リュ少将は前述した方法で荒稼ぎし、複数の愛人を囲うほど豪勢な暮らしをしていた。

「しかしあるとき、20代後半の女性と共にいたところに、別の愛人の30代半ばの女性がやって来て、関係が『バレた』。怒った30代女性は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)の信訴処理科第2窓口に行き、リュ少将の不正行為を洗いざらいぶちまけた」(情報筋)

しかも、この30代女性は、軍の護衛司令部傘下の東洋タバコ会社に巨額の投資を行っているトンジュ(金主、新興富裕層)で、護衛司令部の幹部を務めた家族を持つ、成分(身分)の申し分ない「赤い貴族」だった。

それほどの金持ちであれば、住宅建設への投資においてもリュ少将とつながっていた可能性が高い。つまり、リュ少将の金儲けの秘密を、誰よりも良く知っていたのだろう。