北朝鮮の金正恩総書記は15日に開かれた新型コロナウイルス対策の非常協議会で、国民への医薬品供給と関連して次のように指摘し、責任者を厳しく叱責した。

「国家が調達する医薬品が薬局を通じて住民に適時に、正確に行き届いていないのは、その直接的実行者である内閣と保健医療部門の活動家が現在の危機状況に対する認識を正しく持てず、人民への献身的奉仕精神を口で唱えるだけで積極的に乗り出していないことに起因する」

「党政策の実行を法的に強力に保証すべき司法、検察部門が医薬品保障に関連する行政命令が迅速かつ正確に施行されるように法的監視と統制をまともに行えずにおり、全国的に医薬品取扱および販売で現れているいろいろな否定的傾向を正すことができずにいる」

この発言を報道で知った北朝鮮の地方住民は、どのように思っただろうか。首都・平壌はともかく、地方ではコロナ前から医薬品の不足が当たり前になっていて、病院や薬局に薬はなく、市場で購入するのが当たり前になっていた。

今回のコロナ患者発生の公式発表を受けて、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では、コロナの治療に使う薬の値段が高騰している。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた、恵山市場での先月中旬と今月14日の薬の価格は以下の通りだ(単位はすべて北朝鮮ウォン)。

○アモキシシリン(抗生剤)950ウォン→3300ウォン
○シプロック(肺炎治療薬)1100ウォン→4000ウォン
○シプロフロキサシン(抗生剤)2万3000ウォン→4万5000ウォン
○サルブタモール(気管支疾患治療薬)1300ウォン→5000ウォン
○APC(アスピリン、フェナセチン、カフェインの入った解熱鎮痛剤)1200ウォン→5000ウォン
○咳止め1600ウォン→4800ウォン
(1錠の価格、1000ウォンは約20円)

ちなみに、16日の恵山でのコメ1キロの価格は5500ウォン。数食から数十食、コメ抜きの食事をしてようやく、薬1錠が買えるのだ。

今回の医薬品の高騰は、需要の高まりのみならず、コロナ鎖国に品薄、商人やトンジュ(金主、新興富裕層)による買い占めなどが複合的に作用したものだ。金正恩氏の指摘した「全国的に医薬品取扱および販売で現れているいろいろな否定的傾向を正すことができずにいる」とは、このことを指すものと思われる。

恵山では14日から封鎖令(ロックダウン)が施行され、一切の外出が禁じられたが、薬品の購入に際しては1時間の外出が許可されることになっている。しかし、「カネがあっても薬がなく、薬があってもカネがない」(情報筋)のが実情で、外出許可を得ても何の役にも立たないという。

また、不安に駆られる市民に対して当局は「インフルエンザと変わらないから、風邪薬を服用せよ」「柳の葉を煎じて服用せよ」などと呼びかけている。柳はアスピリンの原料となることから、全く根拠のない話ではないのだが、コロナ治療に効果があるとはとても言い難く、当局のコロナ対策のやる気の無さに不満を抱く住民が増えていると情報筋は伝えた。

なお、医薬品を中国から取り寄せたとの報道もあるが、特権層や平壌市民に優先的に配給され、地方の一般住民の手元に届く見込みはない。また、金正恩氏が軍に対して医薬品の供給する特別任務を下したが、軍幹部により横流しされるのではないかと指摘する声も上がっている。