大規模な再開発工事が行われていた北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)。

金正恩総書記は、何度も現地視察に訪れるなど並々ならぬ関心を見せており、「革命の聖地」であると同時に新時代の「高原文化都市」でもあるため、他の地方と比べ冷遇されている両江道の中では、特別待遇を受けている地域だと言える。

それでも、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に伴う医薬品の不足からは、自由でいられないようだ。現地では治療薬がなく、代わりに麻薬を使って死亡する事例が起きている。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは先月27日。三池淵市革命史跡地保衛隊長の妻と7歳の息子が、発熱の症状を見せたため、中国製の鎮痛剤を服用したものの、効果がなかったため、アヘンを使用した。

すると、容態が急変し、三池淵市病院に緊急搬送された。2人は意識を取り戻すことのないまま、翌日息を引き取った。

現地では病院、薬局問わず解熱鎮痛剤が品薄になっており、現地では「麻薬成分が含まれている」と噂されている中国製の「正痛片」(正規品はアセトアミノフェン、アスピリン、カフェインの混合薬)を使う人もいるが、ほとんどの人はそれすら入手できず、病院で診察を受けても、何の役にも立たない処方箋が出されるだけだ。結局、アヘンなどの麻薬を使うしかないのだという。

ちなみにアヘン(モルヒネ)には強い鎮痛効果があるものの、解熱効果はないのだが、現地では医薬品の代用の何にでも効く薬として長年使われて続けてきた。

事態を重く見た朝鮮労働党三池淵市委員会は、29日に緊急会議を開き、正確な処方に基づき医薬品を使用しなければならない、入院、自宅治療の場合も、国営の人民病院が処方した薬を服用しなければならないと、何の意味もなさない話が出るだけで、特段の解決策は示されなかったとのことだ。

そんな体たらくでありながら、アヘンなどの麻薬類の使用、流通は国家非常防疫体系に大きな混乱をもたらす反国家的行為だとみなすとの警告は忘れなかった。

会議に参加した非常防疫部門や病院のイルクン(幹部)の間からは「希望のない会議だった」との声が漏れ伝わったとのことだ。

北朝鮮では、コロナ前から深刻な医薬品不足に苦しんでおり、多くを輸入に頼っていたが、2020年1月以降のコロナ鎖国でそれも途絶えてしまった。これに、内閣の保健省が下した命令は、「各道、市、郡の病院は薬品を自主的に製造、使用せよ」というものだった。

自力更生を名分とした、役割放棄にほかならない。