北朝鮮は深刻な経済難の中でも、首都・平壌市内の松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区で1万世帯住宅の建設事業を進めている。完成が遅れていると伝えられているが、住宅の割り当てを受ける市民の中に、入居前に売り払った人がいたことが発覚し、摘発された。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、摘発されたのは3人。北朝鮮では、新築住宅に入居する場合、内装工事は入居者が行うのが一般的だが、この3人はその経済的余裕がなかった。だからと言って、入居しなければ完成から3ヶ月で入居する権利が剥奪されてしまう。そこで、権利を売り払ってしまったのだ。

それが発覚し、3人は朝鮮労働党平壌市委員会、平壌市検察所が行う大思想闘争会議の舞台に立たせられた。つまり吊し上げにされてしまったということだ。区域の人民班長(町内会長)以上の幹部らが集まる中、3人に対する集中的な批判が行われた末、住宅は没収されてしまった。

3人がいくらで売却したのかは知られていないが、平壌市内の平均的な住宅の居住権の価格は2000ドル(約26万7000円)だというのが情報筋の説明だ。

実は、彼らのように入居権を売り払ってしまった人は少なくないという。

「バレずに静かに売り払った人もかなりいるのに、一部の人だけがバレてしまい、(思想闘争舞台に)立たされてしまった」(情報筋)

ちなみに、松新・松花地区は金正恩総書記が旗振り役となって建設されたこともあって、「贈り物区域」と呼ばれている。通常、このような地域の住宅を売り払うことはタブーだが、市内中心部ではないことから、売買が密かに行われ、当局も黙認しているという。

ならば、3人はなぜ摘発されてしまったのか。それはやり方がまずかったからだ。

「今回摘発された人々はカネのやり取りを複雑にしてしまったせいで、買い手により当局に信訴(告発)され、周囲の人々の恨みを買って思想闘争会議の舞台に立たされた」(情報筋)

取り引きの過程で何らかの無理な要求があったため、このようなことになったようなのだ。今後は、やり取りのあった現金の返還をめぐり、またひと悶着あるだろう。

北朝鮮で不動産の取り引きは違法とされているものの、同じ平壌市内でも松新・松花地区より格上の和盛(ファソン)地区の住宅は、何千ドルもの投資金を先払いすることで入居する権利が得られるという。

ちなみに松新・松花地区は既に完成したことになっており、今年4月11日に金正恩氏が参加して竣工式が行われたと国営メディアが報じている、しかし、住宅や公共施設の建物160棟のうち、内装工事が終わり実際に入居が可能なのは2棟に過ぎないと、別の情報筋は伝えている。

竣工式を行うために、一部だけを完成させたり、あたかも完成したかのように偽装したりすることは、北朝鮮で一般的に行われていることだ。