東北を除き、異例の早さで梅雨明けを迎えた日本。北上した梅雨前線は、朝鮮半島に大雨をもたらしている。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、首都・平壌を中心とした地域で大雨が降っていると伝え、平壌市内の大同江(テドンガン)区域では、1時間に67ミリを記録、秒速10メートルを超える強風で街路樹がなぎ倒されるなど、被害の様子も報道した。

また、30日までに全国的に最高で300ミリの雨が降り、鴨緑江(アムロッカン)、清川江(チョンチョンガン)がはん濫警戒推移を超えることが予想されるとも伝えている。

平壌市人民委員会(市役所)は、大雨による道路や農地の浸水被害を防ぐために緊急指示を出し、多くの市民を災害を防ぐための作業に動員していると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

人民委員会は25日、各区域と洞(末端の行政単位)、人民班(町内会)、機関や企業所、団体に対して、浸水を防ぐための行政指示を下した。これは事実上の総動員令だ。

市内のうち、平川(ピョンチョン)区域と大同江区域は低地に当たり、下水道が流入した土で詰まったことで雨水が逆流、悪臭を放つ下水が道路に流れ出している状況だ。当局は、詰まった土を除去する下水溝を掘る作業に総力を集中するよう指示を下した。

また、郊外の農場の排水路の詰まりを解消する作業にも、力量を総動員せよとの指示に従い、洞と人民班、機関、企業所の人員は、担当の農場の排水路の詰まりを取り、堤防を補強する作業を行っている。

北朝鮮で最もインフラが整っている平壌だが、下水道や農地の排水施設の管理はきちんとできていないようだ。情報筋は、平壌市民の意見として次のように伝えている。

「基本的な上下水道網、河川の管理、貯水池の補修、排水施設の整備がなされていない。何か起きるたびに人を動員して解決するのではなく、技術を持って科学的に治山治水を行うべき」

また、コメ、トウモロコシ、野菜など平壌に供給される食糧生産にも大きなダメージが出ているかもしれないと心配する人もいる。

国家非常防疫司令部は、梅雨の雨による水質汚染で、急性腸内性伝染病の感染が広がるリスクがあると警告し、人民委員会に対して、汚染水が道路にあふれることのないようにし、まだ被害が発生していない区域では、あらかじめ対策を取るように指示を出している。

このような自然災害だが、日本や韓国、中国では比較的軽微な被害で終わる場合でも、北朝鮮は深刻な被害を受けることが多い。防災インフラが整っていないからだ。

2016年8月末に朝鮮半島に上陸した台風10号(ライオンロック)では、豆満江流域を中心に、10万人もの被災者が発生、1万6000ヘクタールの農地が浸水するなど、甚大な被害が発生した。

また、自然災害による被害は毎年相次いでおり、食糧難とコロナに苦しむ北朝鮮にさらなるダメージを与えることになる。