北朝鮮に接する中国遼寧省の丹東市。国境から程近い税関の庁舎周辺には、北朝鮮向けの物資を取り扱う店舗、企業の代理店が立ち並ぶ。その中には、自動車ディーラーも少なくないが、中には「朝鮮総代理店」の看板を掲げているところもある。

中国から北朝鮮に輸出される自動車がいかに多いかを示している。北朝鮮にも、自動車を製造する企業は存在する。旧統一教会の投資で1998年に設立された平和自動車、チェコスロバキア(当時)の援助で1956年に設立された勝利自動車などがあるが、自動車産業については、国営メディアも最近はほとんど報道しておらず、生産は非常に低調と思われる。

北朝鮮で走っている自動車の多くが中国製だが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の情報筋も「わが国(北朝鮮)の道を走っている自動車のほぼ100%が中国製」と語っている。

中国依存の高い状況を無視して行われているコロナ鎖国で、自動車部品の輸入もストップしてしまい、盗難が多発していると情報筋が伝えている。

先週、水南(スナム)区域では、ドライバーが自宅の前に車を停めて、夕食を食べている際に車が盗まれる事件が起きた。その翌日には、松坪(ソンピョン)区域の輸城洞(スソンドン)の人通りの少ない通りで、すべての部品が剥ぎ取られて、ボディだけが残った車が発見された。

輸入がストップしたことで、新品はもちろん中古品でも手に入らなくなってしまい、手っ取り早く換金できる自動車部品の盗難が相次いでいる。夜陰に紛れて、民家の前の路上や村の入口に停めてある車を、ひとけのない場所まで引っ張っていって、部品を洗いざらい剥ぎ取るというのが手法だ。

自分の車の部品を盗まれたドライバーが、やむにやまれず、他人の車の部品を盗むという悪循環も起きている。

企業所でも、所有する車の部品が盗まれると、生産と運送に深刻な問題となるため、従業員が車に泊まり込む形で警備を行っている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋も、自動車部品の盗難事件が多発していると伝えた。北朝鮮の企業所は、車庫を備えていないケースがほとんどで、車が盗難のターゲットになっている。情報筋の務める企業所では、2人体制で夜間勤務を行っている警備室の前に車を停めているが、それでも盗難事件が複数回起きていると証言した。

結局、ドライバーに車の管理と警備の責任を負わせることにした。ドライバーは、自宅の柵を高くして、庭にビニールを被せて車を停め、2頭の番犬と共に車を守っている。

コロナ鎖国による衣と食のみならず、ありとあらゆるものが不足し、盗難事件が続発しているが、いずれの情報筋も、安全部(警察署)の動きについては伝えていない。住民監視とワイロの巻き上げに熱心で、犯罪捜査に後ろ向きな安全部だけあって、ほとんど役に立っていないのだろう。まさい「頼りになるのは番犬だけ」といった状況だ。

朝鮮労働党は、思想的武装で経済的難局を乗り越えようと叫ぶばかりで、治安悪化や住民の生活対策に何ら関心を示していないと、情報筋は批判している。