北朝鮮の国家非常防疫司令部は、最近次のような内容の報告書をまとめた。

江原道(カンウォンド)金剛(クムガン)郡に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第1軍団第2師団の軍人の子どもが、伊布里(イポリ)で、南朝鮮(韓国)の敵地物資(ビラ)を拾い、それを頻繁に自宅に出入りしていた下戦士(二等兵)に渡したが、それに接触した軍官(将校)が首都・平壌に出張したことが、新型コロナウイルス拡散の根源となった。

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」は、先月と今月に合計で3回、マスク、医薬品、ビラなどを入れた大型の風船を北朝鮮に向けて飛ばしたと明らかにしている。コロナの根源云々は荒唐無稽な話だが、南北を分断する軍事境界線に接する金剛郡まで、風船が飛んでいったのは、充分ありえる話だろう。

この一件が、第2師団の将兵とその家族に、コロナ以上の恐怖となって立ち現れた。詳細を、デイリーNKの朝鮮人民軍内部の情報筋が伝えた。

報告を受けた国家非常防疫司令部は、最前線の地域の軍人家族の思想的緩みが危険な結果をもたらした、看過できないとして、軍人家族の指導を担当する部隊の家族指導課に対する全面的な検閲(監察)を行うべきだと定義書を出した。

武力総司令官である金正恩総書記は、定義書を批准、「最前沿(最前線)部隊の政治部家族指導課に対する集中指導事業を実施せよ」との命令を下した。さらには、韓国から飛んできたビラを適時に通報せず、大したことではないと考える態度と精神状態がもたらした、これを座視してはならない、という金正恩氏の「心配のお言葉」が下される事態となった。

これに伴い、朝鮮人民軍総政治局は、組織部、宣伝部、青年事業部、総務部、党生活指導課など政治部内の主要部署から派遣された人員と共に、11日から、最前線の陸軍の軍団、海軍、空軍の戦隊の隷下にある部隊の政治部家族指導課に対する集中検閲を始めた。

また、最前線の陸海空軍の部隊の政治部長がこの事案に全責任があるとして、家族指導課長と共に検閲の対象となっている。中でも、「事件」の発端となった第1軍団第2師団に対しては、家族指導課の敵地物資通報体系、非常防疫期間の実務的政治事業の進み具合などについて監査を受け、その結果は金正恩氏に報告されることになっている。

敵地物資を拾った子どもとその家族は、忽然と姿を消したとの噂でもちきりとなっている。また、家族指導課長の解任、撤職(更迭)は避けられないだろうとも噂されている。

他の最前線部隊に対する検閲も、今月末までに同時に行われており、事件のとばっちりを受けた形だ。