北朝鮮で年間どれくらいの夫婦が離婚するのか、統計が公表されていないためわからない。手続きが非常に面倒なため、かつては少なかったと言われている。

協議離婚は制度として存在せず、必ず離婚裁判を経なければならない。また、裁判官が離婚申し立ての理由が正当であると認めなければ、離婚が成立しない。裁判所で認めてもらえなかったからといって、夫婦は円満な関係に戻るとは限らず、事実上の離婚状態にある夫婦も相当数いるものと思われる。

北朝鮮社会は離婚を悪と考えるため、できる限り難しくして、離婚を減らそうと考えるのだろう。それでも減らない離婚対策として、咸鏡北道(ハムギョンブクト)鏡城(キョンソン)郡は、年間の離婚裁判の件数を制限していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の情報筋によると、経済的理由による家庭不和が増えたことで、離婚を望む夫婦が増えている。裁判所の前には、常に10数人の若い男女が集まっていて、ほとんどが離婚申請のために判事や弁護士と話し合うためにやってきた人々だ。

離婚は社会不安を煽る非社会主義現象(社会主義にそぐわない行為)と考えられているため、裁判所はなかなか離婚を認めようとしない。

情報筋は、裁判所の幹部を夫に持つ知人女性の話として、各市・郡の裁判所は、人口の数に応じて、1年間に処理できる離婚裁判の件数が決められていると伝えた。人口が約10万6000人の鏡城郡で、年間に行われる離婚裁判の数は40件。これを超えると、裁判官が当局から追及を受けるという。

北朝鮮の総人口が約2500万人であることから計算すると、当局は全国的な年間離婚件数を1万件以下に抑えようとしているようだ。ちなみに人口が約5100万人の韓国の2021年の離婚件数は10万2000件、日本は19万3251件だ。

それを知った情報筋は「裁判所が離婚をあまり認めてくれないのは知っていたが、当局が離婚裁判の件数まで決めているとは本当に衝撃だった」と述べている。

また、離婚を制限することがむしろ社会的不安を煽っているとして、裁判所前で出会った女性の話をした。

この女性は、結婚後に鏡城で暮らしていたが、生活苦から離婚することで夫と合意。60キロ離れた明澗(ミョンガン)郡の実家に戻ったが、実家と裁判所を2年もの間、何度も行き来して離婚手続きを行っているが、未だに離婚できておらず、非常にもどかしい思いをしているとのことだ。

当局が離婚を認めようとしない理由の一つは、ただでさえ深刻な少子化をさらに深刻にするから、というものだが、金正恩総書記は昨年3月、離婚の原因を作った側に6ヶ月の労働鍛錬刑(懲役刑)を課すとの命令を下している。

一方、両江道(リャンガンド)雲興(ウヌン)郡の情報筋は、「離婚を悪」とみなしていた社会的雰囲気が変わりつつあるとし、それにもかかわらず離婚は依然として難しく、結局は裁判官や弁護士に渡すワイロの額で、離婚できるかどうかが決まると述べた。

情報筋の友人は、弁護士に500元(約1万100円)のワイロを渡して、裁判所に離婚関連の書類を提出させた。同時に、裁判官には1500元(約3万400円)のワイロを渡して、弁論などの手続きを一切行わず、わずか15日で離婚を認める判決を下させた。

ワイロなしでは3年経っても5年経っても離婚できないのが実情だという。あらゆる権限がワイロを要求するネタとして使われる北朝鮮だが、離婚裁判とて例外ではないのだ。

「カネがなければ離婚もまともにできないのがわが国(北朝鮮)の現実だ」と述べた情報筋。離婚が難しいため、若者の間では、結婚式を挙げても婚姻届を出さず、子どもができるまで事実婚を続けるのが当たり前になっていると説明した。