北朝鮮は「批判」で成り立っている社会だ。すべての国民は、職場や学校などで週1回以上、「生活総和」と呼ばれる自己批判の会に参加する。日々あったことを「生活総和手帳」に書き留め、それを元に自分の行動や考え方を批判する。批判は、他の参加者からも受ける。

そして、その拡大版と言えるのが「思想闘争会議」だ。この場では多くの人が見守る中、壇上に引き立てられてきた人々が次から次へと厳しい批判に晒される。だが、思想を叩き直すという本来の目的が変質し、娯楽の少ない北朝鮮の人々にとって、面白い見世物と化しているようだ。

脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏は、著書『平壌資本主義百科全書』で、金日成総合大学の在学時に見た思想闘争会議を様子を描写しているが、「思想学習はサボっても、思想闘争会議はあまりにも面白いので、参加率が高い」としている。以下、本文から一部抜粋する。

自己批判が終わると大学の党書記が「それで君、妻を捨てるつもりなのか、捨てないつもりなのか」と聞くと、問題になった学生は「暮らします」と叫んだ。「なんだその声は?大学の隅々にまで聞こえるように返事しろ!」と言うと、「はい、絶対に捨てずに共に暮らします!」とありったけの声を振り絞って叫んだ。

同様の集会は「公開暴露の集い」という名前でも行われているようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、最近開かれたその様子を報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の情報筋によると、今月22日午前10時、市内の浦港(ポハン)区域の南江(ナムガン)1洞にある映画館で、朝鮮社会主義女性同盟(女盟)主催の公開暴露の集いが開かれた。

壇上に立たされたのは3組の夫婦。いずれも不倫などで仲が悪く、離婚を裁判所に訴えたのだが、どういうわけか批判の矛先を向けられてしまった。当局は離婚を「社会不安を煽る悪」と規定して、離婚のハードルを上げているが、今回も離婚防止策の一環と思われる。

情報筋は、詳細に触れていないが、夫婦の私生活についての暴露が続き、結局は「(朝鮮労働)党が決めたとおりに結婚を維持せよ」として、離婚が認められなかったという。

他人のプライベートが次々と暴露された今回の公開暴露の集いだが、観衆は一様に面白がると思いきや、批判的な声が多かったという。

「党は、家庭が破綻すると子どもたちが不良になり社会秩序が崩れると強調したが、家庭を維持して子どもを食べさせる方法がないのに、どうしろというのかと反発する空気もあった」(情報筋)

このような公開暴露の集いは、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)でも開かれた。現地の情報筋によると、洞(町)ごとに行われ、批判対象となったのは離婚危機を迎えた夫婦だ。

今月22日に恵山市宣伝隊で開かれた公開暴露の集いでは、2組の夫婦が壇上に立たされ、2時間に渡り、家庭を顧みず不倫をしていたなどの批判が行われ、結局離婚は許可されなかった。

一部始終を見守った情報筋は「家庭を維持させるのではなく、人々の前で恥をかかせることで個人の人権を侵害する当局の暴力」だと批判している。