北朝鮮国民の生活になくてはならないのは、市場だ。全国に4〜500ヶ所ほどあると言われている。元々は、農民が個人用の畑で取れた余剰農産品を販売する農民市場だったが、国家主導の配給システムが崩壊した1990年代後半以降、農民市場が母体となって、現在あるような公認かつ大規模な市場へと発展した。

市場を利用して商売するには、市場管理所に市場管理税(ショバ代)を納めなければならないが、その額が最近、相次いで値上げされ、商人の不評を買っている。

複数のデイリーNK内部情報筋からの情報を総合すると、1日あたりの市場管理税は8000北朝鮮ウォン(約160円)から2万北朝鮮ウォン(約4000円)。

平壌市の大城(テソン)区域にある龍興(リョンフン)市場では従来、市場管理税は基本が4500北朝鮮ウォン(約90円)で、売台(ワゴン)のロケーション、サイズ、扱う品物によってさらに追加で支払う形になっていたが、これが8000北朝鮮ウォンに上げられた。

平壌郊外の平安南道(ピョンアンナムド)の温泉(オンチョン)市場の場合、横60センチ、縦100センチのワゴンが基本で、サイズが10センチ大きくなると追加で1300北朝鮮ウォン(約26円)、人通りの多い道に面したワゴンの場合は追加料金だけで5000から6000北朝鮮ウォン(約100円〜120円)になる。

また、穀物や野菜などの食料品は基本料金だけで済むが、儲けの大きい衣類や電化製品を扱っている場合は、追加料金が求められる。有利な場所で電化製品を売るには、1日の市場管理税だけで2万北朝鮮ウォンに達する。

慈江道(チャガンド)の情報筋によると、江界(カンゲ)市場の場合、ワゴンを2人で分けて使う場合は、1人あたり8000北朝鮮ウォンで済むが、1つまるごと使う場合には、1万2000北朝鮮ウォン(約240円)から1万5000北朝鮮ウォン(約300円)になる。これに加えて、人通りの多い道に面している場合には、4000北朝鮮ウォン(約80円)を追加で徴収される。

品物は、自宅から毎日持ってきて、売れ残りは持って帰るのが基本だが、電化製品など大きいものはそうも行かない。この場合、市場管理所に荷物保管料を支払うことになるが、基本料金が5万ウォン(約1000円)で、サイズや個数により追加で支払う。ただし、1日券、1週間券、1ヶ月券があり、まとめて支払えば、少し割引してもらえるとのことだ。

当然のことながら、商人からは不満の声が上がっている。

平安南道の情報筋は「市場により市場管理所のやり方が異なり、市場管理税も異なるが、うちでは市場管理員が勝手に決めた額を要求することもある。(場所の良い)通路側で初倍する人からは1日に2回、市場管理税を徴収されることもある」と述べた。

平壌の情報筋も「商売は振るわないのに、市場管理税はどんどん上がり、儲けがない」とし「封鎖(ロックダウン)が長期化して、市場管理員も儲けがないから、市場管理税を値上げして幹部が私服を肥やしている」と述べた。

市場管理税は、公式の税金制度が存在しない北朝鮮で、地方政府にとって非常に貴重な「税収」だ。同時に巨大な利権でもある。ワイロを使ってでも市場管理員になろうとするのは、徴収した市場管理税の一部を着服できる、確実に儲かる仕事であるからであり、その一部は地方政府の幹部にも上納される。

市場管理税を出せないほど零細な商人は、市場周辺の路上や住宅地の路地裏で露店を広げて商売をするが、当局はこれを取り締まる。非社会主義(社会主義にそぐわない行為)の取り締まりという名分を掲げるが、実際のところは市場管理税の取りはぐれを嫌ってのことだろう。