北朝鮮も他の多くの国と同様に国勢調査を行っているが、その数字は公表されていない。調査内容を妻に話したことから、結果的に国外流出を招いたアーカイブの所長が処刑された事例があるほどの、超一級の機密情報として扱われている。

農村部での人口減少の深刻な実態が国内外に伝わるのは、農業第一主義を掲げる北朝鮮としては、都合が悪いのだろう。

具体的な数字はわからなくとも、政府の政策から、その深刻さが垣間見える。朝鮮労働党の平安南道(ピョンアンナムド)委員会(道党)は、余剰労働力を農村や炭鉱などに異動させることを指示したと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道内の工場・企業所の中には、まともに稼働しておらず、従業員は出勤するだけで何もしないか、ワイロを支払って欠勤したりしているものが多い。道党は「節約であり増産だ」とのスローガンを掲げ、仕事のない従業員を、農村や炭鉱など労働力が慢性的に不足しているところに送り込む、一種の「リストラ」を開始した。

道党は今回の事業で、朝鮮式社会主義の全面的発展を行う構造に変更し、1人が3〜4人の役割を果たせるような構造に、労働力の配置を調節、改善しようと訴えている。

また、工場や企業所の従業員を減らすことにより、それらを通じて行われる食糧配給の量を1日700グラムから800グラムに増やし、残った従業員の能率を上げなければならないと強調している。

リストラ対象の人員リストは、今月9日までに道党の労働課に提出される。労働課は、主に農村や炭鉱に彼らを送り込み、都市と農村の人口比率を合わせることを目的にしている。

農村では、国の指示に基づき、二毛作が活発に行われているが、それを担うだけの労働力が不足している。また、国が重要視している炭鉱も多く存在するが、こちらも労働力が不足しており、それを余剰労働力で解消しようというものだ。

この発表を受けて、その職場に欠かせない技術者などを除く一般の労働者の間では不安が広がっている。

北朝鮮では「農民は社会的地位が低い」との認識が根強く、農村の多くや「陸の孤島」状態で、生活や商売に必要なインフラも整っていない。農村や炭鉱で一生働いても貧困から抜け出すのは困難だ。さらに農村は、過ちを犯した幹部の革命化(追放、島流し)処分の行き先とされていることから、当局自らが農村や炭鉱のイメージを悪化させている部分もある。

当局は、今回の「リストラ」以外でも、兵士の兵役を短縮して集団で送り込む「集団配置」を行ったり、都市部に住む若者に「嘆願」の形で半ば強制的に農村、炭鉱に送り込んでいるが、コネやカネを総動員して、都市部に逃げ出す人が少なくない。

おとなしく農村や炭鉱にいれば、「農村戸籍」に切り替えられてしまい、二度と豊かな都会の生活に戻れなくなってしまうからだ。