北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)では、先月末から、個人が経営する理髪店や美容室に対する大々的な取り締まりが行われている。その理由はなんと、個人がこれらを経営するのは違法だからだという。詳細を、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

北朝鮮には国営と個人経営の理髪店と美容室が存在する。かつては国営しかなかったが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに食糧配給が途絶え、生きていくために、人々が理髪店や美容室を開いたというのがその歴史だ。

このような個人経営の理髪店と美容室は、流行に敏感な若者に人気だ。というのも、国営の理髪店や美容室では、国が推奨する、決められたヘアスタイル以外は手掛けておらず、さほど流行を気にしない中年層以上や貧困層が主な顧客だ。

一方で、多少料金は高いものの、客の望む通りのヘアスタイルにしてくれる個人経営の店は、若者に人気を集めていた。

ところが、「理髪店と美容室の個人営業は、違法な金儲け、エゴイズムの産物であり、社会に危険と無秩序を助長する反社会主義、非社会主義だ」として、清津市安全部は、先月末から集中的な取り締まりを始めている。

摘発された場合には、10万北朝鮮ウォン(約2000円)の罰金刑に処し、「罪状の深刻さ」に応じて、別途法的処罰を課すとのことだ。また、国営の店に所属して働くことを強いられるという。

情報筋は「人々が餓死寸前に追い込まれているのに、知らんぷりをしていた国が、今や個人の飯の種を奪おうとしている」と国のやり方を厳しく批判している。

また、経営者や客は取り締まりに反発し、安全部と住民の間のトラブルを煽る結果を招いているとのことだ。

さて、当局のホンネだが、非社会主義・反社会主義を取り締まるところにあるのではない。カネだ。

個人営業を安全に行うには、利益の1割から3割を事実上の税金として納めることを条件に、各市の人民委員会(市役所)の商業部から「商業管理所所属」という看板を掲げる許可を得る。一見して国営に見えるが、実体は個人経営という一種の名義貸しだ。

この「税金」を支払おうとしない店主に対しては、営業中止や設備没収などの制裁が加えられる。しかし、「脱税」をする経営者が多いため、非社会主義、反社会主義の取り締まりを大義名分に掲げ、国営の店に客を誘導しようというもののようだ。