正確な統計はないものの、北朝鮮では交通事故が多発していると伝えられている。昨今、車の数が急増しているが、道路整備は全く追いついておらず、1級・2級道路(日本や韓国の国道に相当)であっても非舗装の区間が多く、峠道は文字通り「酷道」だ。

劣悪な道路事情は事故多発の原因となっている。

北部山間地にある両江道(リャンガンド)では2018年3月、季節外れの大雨が降った後に道路が凍結したことで事故が多発、たった1日で300人もの死者を出す事態となった。

その両江道の恵山(ヘサン)の峠道で先月20日、大型トラックが転覆し、14人が死傷する事故が起きた。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、事故が起きたのは、恵山市内中心部と、南の郊外にある恵山青年鉱山を結ぶ通りにある馬山嶺(マサンリョン)という峠だ。

トラックは、鉱山の坑道の補修に使う砂や砂利を満載しており、その上に労働者が乗っていたが、峠道で急にブレーキが効かなくなった。情報筋によると、道は非舗装で、最近の大雨でえぐれたところも多く、おそらくそこに突っ込んだのであろう。トラックは転覆してしまった。

乗っていた14人の労働者のうち、6人は即死、8人は重傷を負って、近隣の病院に搬送された。脊髄を損傷したり、頭部にひどい打撲傷を負ったりしており、回復の目処が立っていない。無事退院できたとしても、障害が残ることは避けられないだろう。

今回の事故の原因だが、道路事情の劣悪さに加え、車両点検を怠っていたことと思われる。しかし、鉱山側は労働者に「交替でお見舞いに行ってやれ」との指示を下しただけで、事故に対する保証、入院中の食事の提供、看護などの支援を一切行っておらず、すべての負担は家族に押し付けられている。

また、亡くなった労働者の葬儀は行ったものの、国や鉱山からの、遺族に対する補償は一切ない。補償を行えば、非が自分たちにあることを認めることとなり、関係者が処罰を受けることになる。それを避けるために、責任を亡くなった人に押し付けるなどするのが、北朝鮮での「生き残り方」なのだ。また、そもそも鉱山には、金銭的補償を行うほどの余裕はないだろう。

遺族や負傷者の家族は怒りをあらわにしている。

「職場に出勤しなければ思想的に問題があると犯罪者扱いされ、出勤を強いられ、それで事故に遭っても、知らぬ存ぜぬで押し通される。運命だから仕方がないと責任逃れをして、遺族や負傷者の家族は憤りを隠せずにいる」(情報筋)