北朝鮮国営の朝鮮中央通信は14日、「人民の心の中に深く刻まれた共和国旗」というキャプションを付け、北朝鮮の国旗がデザインされたTシャツを着た男児の写真を配信している。

これ以外にも、国旗Tシャツを着た写真が複数配信されているのだが、「党の喉と舌」とされる北朝鮮メディアは、当局の指示に従ってこれら写真を配信していることは間違いない。

実際、平壌のデイリーNK内部情報筋は、「強制的な指示が下されて始まったもの」だと証言している。朝鮮労働党の宣伝扇動部の、思想教養(思想教育)計画に基づく事業で、内閣の軽工業省が協力している。

担当者は宣伝扇動部の副部長と軽工業省の副相となっているが、今回のプロジェクトを提案したのは、金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長と、趙甬元(チョ・ヨンウォン)党書記だと情報筋は述べた。

金与正氏が関わっているとなると、金正恩氏が提案したか、少なくとも話は聞いているものと思われる。

軽工業省に下された布置(布告)の内容は「共和国旗が描かれた国旗の服を胸を張って着こなし、楽しめるように被服部門で革命を起こせ」というもので、様々な産業美術デザイン案を制作して生産せよとの内容も含まれている。

プロジェクトの意図について情報筋は「帝国主義者どもの侵略と搾取を知らず、幸せのみを知って育った新世代は、自国のものを粗末に扱い、外部社会のものを羨むが、これを根絶せよ」との説明があったとし、「新世代がわが国第一主義思想で武装して、われわれの国旗、誇らしい共和国旗が描かれた服を愛用し、国のために働くようにする意図がある」と付け加えた。なお、このプロジェクトは10年にわたって続けられる必要があると考えているとのことだ。

Tシャツへの反応について、情報筋は「毎日地味な服ばかりの日常の中で、共和国旗の服を着て『珍しい』と言う人が最初は多かったが、最近は自慢げに着る人が半分で、特に何の気なしに着る人が半分」だと伝えた。

ちなみにこのTシャツ、国営工場製のものは1着3万北朝鮮ウォン(約510円)、家内班(小規模な生産協同組合)制のものはその半額から3分の1で販売されているとのことだ。

地方の住民や若者の反応について、情報筋は触れていないが、おおよそ予想がつく。

地域によって差はあるが、地方ではコロナ鎖国による深刻な食糧難が発生。コロナ対策の移動統制により、商業活動も活気を失い、食べ物も現金もない有様だ。そんな人々に3万北朝鮮ウォンもするTシャツを着せるには、強制力を伴った形で、購入させるしかない。

その過程で「中抜き」が発生し、高い値段で質の悪いTシャツを掴まされることも考えられる。こんなことで愛国心が育つはずもなく、むしろ当局に対する反発が強まるだけだろう。

一方、「幸せのみを知って育った新世代」という当局の言い方だが、これ自体が的はずれだ。彼らはむしろ、国からの配給が完全に途絶えた後に育ち、自分の力で息抜き、国にありがたみを感じない「チャンマダン(市場)世代」なのだ。愛国心がないわけではないだろうが、上からの押しつけを嫌い、個性を重視する。また、こんなキャンペーンくらいで「外部社会のものを羨む」傾向を変えられるわけがないのだ。

昨今、思想教育や韓流の取り締まりが強化されており、見せしめで重罰に処される者もいるが、彼らの「韓流愛」には微動だにしない。それどころか、当局の監視の目を欺き、韓流を満喫するための裏ソフトが流行る始末だ。

「三日坊主」とまでは言わないが、やってみて実効性が今ひとつなら、なかったことにしてしまうのが北朝鮮。愛国Tシャツキャンペーンがいつまで続くか、見ものだ。