北朝鮮当局が今月14、15の両日にわたり開催した第7回全国法務活動家大会で「反動思想文化排撃法」を根拠とした反社会主義・非社会主義(以下、反社非社行為)取り締まりの強化を強調したことが分かった。今後、思想の緩みを警戒した国民検閲が一層厳しくなるものと見られる。

北朝鮮のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、北朝鮮当局は反動思想文化排撃法が制定されてから2年近くが経過したにも関わらず、「いまだ反社非社行為が蔓延している」との判断に立ち、2017年10月から5年ぶりに全国法務活動家大会を開催した。

今大会では「党と法、大衆を逸脱させる不法行為」に関する問題点が列挙され、それらを法に基づき厳格に扱わなければならないとの指摘が繰り返されたという。特に、反社非社行為を処罰する法的根拠である反動思想文化排撃法について、何度も言及されたとの話だ。

北朝鮮は去る2020年12月、最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で、外国の映画、ドラマ、その他の情報の流布及び視聴を禁止し、資本主義文化の流入を防ぐため同法を成立させた。

法の詳細な内容は公開されていないが、韓国デイリーNKが入手した同法の説明資料によると、北朝鮮は「南朝鮮(韓国)の映画や録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを直接見たり聞いたり保管したりした者は5年以上15年以下の労働教化刑(懲役刑)を宣告され、コンテンツを持ち込み流布した者は、無期労働教化型や死刑など最高刑に処す(第27条)」と定めている。

実際、北朝鮮では同法が制定されて以降、摘発の嵐が吹き荒れてきた。

金正恩総書記が主導して建設された温泉リゾートの職員ら26人が、韓流コンテンツの密売に関与し、重罰の宣告を控えているのは本欄ですでに報じたとおりだ。

今年1月には、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)で、20代の男女のカップルが公開処刑された。刑場では、数百人がその様子を見守ったという。

この2人も韓流コンテンツを密売していたことが発覚し、排撃法違反が適用されたのだ。女性の方は道保衛局(秘密警察)の政治局長の娘という、いわば「幹部令嬢」だったが、罪をもみ消すこともできなかった。

取り締まりの対象には未成年も含まれる。

平城では1月30日にも、女性のダンス講師と10代の女子高生らが逮捕された。ダンス教室で、欧米や韓流アイドルの音楽や映像を流していたことが発覚し、反動思想文化排撃法違反に問われたのだ。講師はすでに処刑されたとの情報もある。

ただ、無慈悲に繰り広げられているように見える取り締まりキャンペーンにも、限界がうかがえる。

平壌と黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党法務部は4月4日、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」という提議書を中央に提出。金正恩総書記が直接サインする「1号批准」を受けた上で、同法違反で17歳未満の少年らが摘発された場合、拘禁処分を科さず、社会的教養処分(思想教育)で済ませるよう指示を下した。

韓流コンテンツの主な消費者層である大量の若者を政治的・肉体的に葬ることには、北朝鮮当局にも「やり過ぎ」との戸惑いや反省があるようだ。

また6月には、平壌郊外の勝湖里(スンホリ)にある政治犯収容所が刑務所に改編され、社会安全省(警察省)特別捜査局が管理する、軽犯罪者を収容する施設となった。特別捜査局は主に高位幹部らを摘発する部門で、反動思想文化排撃法に違反して捕まる幹部が多いことをうかがわせている。

幹部らはワイロを使い、短期で出所するのが常だ。金正恩政権としても、幹部を大量に葬れば行政に支障が出るし、それよりは彼らが貯め込んだ外貨を吸い上げ、さっさと仕事に復帰させた方が得だとの判断があるのかもしれない。

要するに、すでに韓流コンテンツの視聴は社会の隅々まで根を張っており、どんなに取り締まっても完全になくすのは不可能ということだ。

北朝鮮が「社会主義を守り抜く」として作り出した法の矛盾が、むしろ「社会主義の終わりの始まり」を示唆しているとも言えるだろう。