北朝鮮政府は日々、国民に対して様々な布置(布告)を発している。「こうすることになったから従え、違反者は罰する」という一方的な通告だが、中には社会の現実に合っていないものもあり、最初は布告に基づいた取り締まりが行われるものの、やがて有名無実化していく。

それでも懲りずに同じ布告を出すのだが、その代表例というべきものが、国内における外貨使用禁止令だ。北朝鮮ウォンに信用がなく、使い勝手も悪いことから、少額決済でも米ドルや中国人民元が使われることが多い。それを禁じる布告が改めて下されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の情報筋は、今月第2週のある日、市場で物を買うときには外貨を使ってはならない、外貨を北朝鮮ウォンに両替する際には、かならず国家(国立)銀行を使用しなければならないという中央の指示が、企業所の朝礼で伝えられたと伝えた。

指示文は、国内での外貨使用禁止と両替は国家銀行で行なうようにした指示を何年も前から出しているが、外貨使用やヤミ両替が続いているとして、改めて取り締まりを行うと警告した。

この指示に基づき、安全部(警察署)が労働者糾察隊(取り締まり班)を動員し、市場で外貨使用やヤミ両替商の摘発に当たっている。大口のヤミ両替商の女性たちは、家宅捜索を受けた。

また、ヤミ両替商や客が多く集まる清津外貨商店の周辺でも取り締まりが行われている。摘発された場合、外貨はすべて没収される。もちろん、強力なコネがある場合は取り戻すことができるようだ。

情報筋は、この手の指示が下されたのは一度や二度ではないとし、統制と取り締まりで国民の外貨使用を根絶できると考えている当局のやり方は情けないと批判した。

今回の措置だが、貿易会社に務める人々の間からは、中国との貿易再開に備えて不足した外貨を確保するためではないかとの疑いの声が上がっている。個人の外貨保有やヤミ両替は刑法で禁じられた行為ではあるが、それを根拠に個人の資産を奪おうとしているというのだ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)新浦(シンポ)の情報筋も、同様の指示が人民班(町内会)の会議で伝えられたと伝えた。

外貨使用がなくならない理由についてこの情報筋は、「国がありとあらゆる措置を取っても、北朝鮮ウォンの価値がないため、トンジュ(金主、ニューリッチ)と商人の間では依然としてドルの人気が高い」と述べた。

また、経済が正常化していない状況でドルに対する人気と関心は高まり続けるだろうとし、「実行されもしないいい加減な指示が続け様に下されるのを見ると、高位幹部は国の現実をあまりにも知らないようだ」と吐き捨てた。

さて、「両替は国家銀行で」の指示だが、こちらも実効性はゼロだろう。信用がまったくない上に、ブラックレートではなく公式レートでの両替となるため、大損し、引き出しも自由にできない銀行を利用しようという人などいないのだ。