コロナ対策の一環としての警備増強のため、昨年から国境沿いの地域に配属されている「暴風軍団」ごと朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第11軍団。

非常に素行が悪く、脱北や密輸を行おうとした者はもちろん、間違って緩衝地帯に足を踏み込んだ者や何の罪もない野生動物などを手当たりしだいに射殺。その凶暴さから地元の評判は最悪だった。

そんな暴風軍団がグダグダの状態になっているという。その原因は「ナツメ」だ。詳細を、デイリーNKの朝鮮人民軍内部の情報筋が伝えた。

首都・平壌郊外の黄海北道(ファンヘブクト)の祥原(サンウォン)には、ナツメを栽培する大規模な農場がある。北朝鮮で「貴族の果物」と呼ばれるナツメだが、ミカン、アプリコットなどとの交配で優良種のナツメを栽培している国内唯一の農場だ。

生産されたナツメは総政治局や総参謀部など、軍の核心機関の幹部に1年に1回配給される。また、大切な客への贈り物としても使われ、北朝鮮では超の付く高級果物として定評がある。

農場は国防省後方総局の所属となっていたが、朝鮮労働党中央委員会(中央党)は、農場が将兵に食糧を供給する副業地(田畑)ではなく、特定の軍幹部が独占的に得られるナツメを生産しているのは党の政策に反すると指摘。中央党傘下の錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の経理部に移管するよう、軍や国防省に通告した。

中央党はまた、移管作業に当たる人員を暴風軍団から捻出するように指示した。収穫の時期に移管を行わければならなくなったため、収穫に支障がないよう早急に作業を終わらせるためには、最精鋭部隊である暴風軍団が適任だと判断したためだという。

現在、農場の周辺では、完全武装した暴風軍団の兵士が24時間体制で警備を行っており、収穫したナツメの輸送、車両の護送などあらゆる作業を行っている。

農場の移管作業に兵士が駆り出されたことに対して、暴風軍団の幹部は懸念を示し、総参謀部に問題を提起した。ただでさえ国境警備要員として多くの兵力を出しているのに、冬季訓練の準備期間中に農場の移管作業に駆り出されると、全兵力の2割がいなくなり、基本戦闘力を喪失してしまうというのだ。つまり、国防に穴が空いてしまっている状態だ。

また、農場の警備や収穫の監視など、移管作業と関係のない任務に関しては、動員を控えてほしいとも要請した。

総参謀部は、動員兵力が軍団の全兵力の2割を上回ることのないように、上部と調整するとの意見を示したが、中央党の指示に基づく作業であり、その下部組織である朝鮮労働党人民軍委員会に問題を提起したとしても解決する問題ではなく、軍団の幹部は頭を抱えているという。

農業支援やインフラ、住宅建設などに動員され「国営の便利屋」と化してしまっている朝鮮人民軍だが、暴風軍団と言えども、例外ではないようだ。