以前より短縮されたとは言え、男性は7〜8年、女性は5年と、依然として世界で最も長い北朝鮮の兵役。劣悪な環境に耐え抜き、無事勤め上げた人々には、朝鮮労働党への入党や大学進学への推薦などの機会が与えられることもあるが、金銭的な補償は一切ない。

除隊時に持たされるのは、わずかな食べ物だけ。列車が大幅に遅延したことで、食べ物がなくなり、自宅に戻る列車内で餓死するという悲劇的な事件も起きている。

事件が起きた当時より食糧事情がさらに悪化している今の北朝鮮だが、食べ物を得るために、兵役満了を控えた兵士が民家や農場を襲う事件が多発している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の情報筋は、「現地に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第10軍団の兵士たちが部隊周辺の協同農場や村を襲撃し、収穫した農作物を強奪する事件が多発している」と伝えた。ただでさえ食糧難に苦しんでいる農民からは、当局と兵士に対する怨嗟の声が上がり、信訴(告発)が相次いでいる。その数は、道内の三水(サムス)、甲山(カプサン)などで、10月だけで11件に達する。

豊山(プンサン)では、兵士の集団が夜に邑(郡の中心地)と周辺の農村を次々に襲撃、豚、犬、鶏、山羊などの家畜を盗む事件が複数件発生した。不満の高まりを受け、郡の保衛部(秘密警察)が慌てて捜査に乗り出し、犯人を摘発した。

逮捕された副小隊長は来年に除隊を控え、部下を連れて協同農場の脱穀場と農民の家を襲撃し、コメ400キロ、豚1頭、山羊5頭を盗み出し、顔見知りの民間人に売ってカネを受け取っていたことが明らかになった。

朝鮮人民軍では、横流しなどにより充分な食糧が届かず、空腹に耐えかねて農場や民家を襲う事件が多発しているが、今回の事件は腹が減ったために起こした事件ではなかった。

襲撃に参加した兵士は、副小隊長同様に除隊を控えており、その準備のために盗みを働いたという。軍団の中では、先立って除隊した兵士から届いた「除隊準備をまともにせずに除隊すれば餓死する」との手紙の内容が噂として広まり、犯行を煽ったようだ。それは根拠のない話ではない。

除隊してから職場に配属されるまでにはしばらく時間がかかるが、その間に商売をするなどして食いつながなければ、餓死のリスクが高まるのだ。それで、除隊後の生活のために盗みを働いたというわけだ。

現在、軍団やその傘下の旅団の政治部、参謀部は、軍官(将校)を教官としてすべての大隊に派遣し、民間人との関係を円満に保て、夜間に無断外出して悪事を働けば厳しく取り締まるなどと思想教育を行っている。だが、このようなカンパニア(一時的なキャンペーン)的な思想教育と統制教化で、問題は解決しないだろうと情報筋は見ている。