抗日パルチザンの子孫など、特権層の子女だけが入学を許される北朝鮮のエリート養成機関の万景台(マンギョンデ)革命学院。康盤石(カン・バンソク)革命学院などと並び、「金氏王朝」とも呼ばれる北朝鮮の現体制を支える「赤い貴族」のためだけに存在する教育機関だ。

金正恩総書記は先月12日と16日の2回、万景台革命学院を訪れ、生徒の食事について次のように指示した。以下、一部記事から抜粋する。

金正恩総書記は、自らご飯とスープの味も見てやり、生徒らに一番好きな料理が何か、食物をどのように加工した時が一番おいしいかと親しく尋ね、生徒の食生活を彼らの好みと栄養学的要求に即して向上させるために肉と卵、魚と野菜、コンブと塩辛、基礎食品などを日常的に十分に供給するように温情のこもった措置を講じた。

この視察の後、てんやわんやの大騒ぎになったのはチョッカル(塩辛)工場だ。その経緯を平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

黄海南道(ファンヘナムド)の殷栗(ウンニュル)郡にある金山浦(クムサンポ)チョッカル工場に先月29日、金正恩氏のマルスム(お言葉)と共に、緊急の課題(ノルマ)が下された。生産されて貯蔵庫の中にあるチョッカルと、新たに生産するものと合わせて4ヶ月分を万景台革命学院に送れというものだ。

「万景台革命学院はわが国(北朝鮮)のチュチェ(主体)革命企業の骨幹を育てる最高の学院で、食卓が食事でいっぱいにならなければならない」
「質が落ちないよう、最も良質な材料でチョッカルを生産せよ」(指示の一部)

この指示は工場の朝鮮労働党委員会のみならず、受け取る側の万景台革命学院にも伝えられた。生徒への食料供給は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の後方部(補給担当部署)を通じて行われるのが通常だが、今回の場合に限って、万景台革命学院後方部と直接やり取りすることとなった。

チョッカルは、そのまま食べる以外にも、キムチの材料となったり、タレとして使うなど、日本の塩辛とは比べ物にならないほど、食生活に占める割合が大きい。実際、学院の生徒たちもチョッカルをよく食べるそうだが、その量が足りていないのを見た金正恩氏は心を痛め、大量に送ることと同時に「あまりしょっぱくなく、適度に発酵させたもので、子どもたちの成長、発育、好みに合ったチョッカルにせよ」との細かい指示も下した。

さらに、「思想を持ってチョッカル生産に動員されるべき」とし、生徒のみならず、学院の職員や家族にまで行き渡るように、充分な量を確保せよとも指示を下した。

工場は、一連の指示に基づいて、生産した製品の半分以上を既に万景台革命学院に送り、今後は学院に送るチョッカル生産のノルマが増やされ、工場のイルクン(幹部)はアミなど生産に必要な材料の受け取りや生産準備などに奔走しているとのことだ。

今の北朝鮮は、一般国民はもちろん、今まで食糧配給が徹底されていた保衛員(秘密警察)、安全員(警察官)、さらにトンジュ(金主、ニューリッチ)ですら、食べるものがなく、餓死する人が現れるほど深刻な食糧難に襲われている。

その裏で、「赤い貴族」の子孫たちは、美味しいチョッカルを腹いっぱい食べるという、浮き世離れした贅沢な生活をしているのだ。