「違法行為を行っている者は自首せよ。今自首すれば許してやる。自首せずに摘発されれば重罰に処す」

違法行為の追放キャンペーンに当たって当局がよく使うこの手のレトリック。ほとんどの人はガン無視するが、中にはバカ正直に、あるいは摘発が免れない状況となりいっそのことと自首する人もいる。そんな彼らは本当に無罪放免となったのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、会寧(フェリョン)で複数の家族が先月末、忽然と消える事件が起きたと伝えた。隣人はもちろんのこと、地域担当の安全員(警察官)ですら知らないうちに消えた。

その中には、海外と通話できる携帯電話を貸したり、中国や韓国に逃れた人々の仕送りを北朝鮮に残した家族に渡したりするブローカー業を営む、情報筋の知人が含まれていた。その人は、隣人や安全員、保衛員(秘密警察)とも良好な関係を築いていたが、ブローカー業のことは、彼らしか知らなかった。

会寧は中国との国境に接しているため、誰かが突然いなくなると脱北が疑われるところだ。しかし後日、そうではなかった事実が明らかになった。

国家保衛省(中央の秘密警察)は「違法な携帯電話を使用している者は自首すれば許す」として自首を促したのだが、このブローカーはどういうわけか、それを信じて自首してしまったのだ。

そして、しばらくしてから彼とその一家は姿を消した。

違法な携帯電話の使用や送金に関して、地元の安全部、保衛部は介入できないようになっている。これは、ブローカーが両者の庇護のもとに商売をするケースが一般的だったからだ。一方、取り締まりは平壌の国家保衛省が直接行っており、今回のだまし討ち逮捕となったということだ。

両江道(リャンガンド)の情報筋も、「安全員や保衛員の庇護のもと、中国の携帯電話を持ってかなりの利益を上げていた恵山(ヘサン)在住のブローカー複数が、突如として姿を消し、どこかへと連行される事件が起きている」と伝えた。

当局は先月、「自首すれば今までの罪を問わず許すから、自首して新たな生活を始めよ」と自首を強く促したが、これに応じた人々が連行されてしまったのだという。彼らと繋がっていた安全員や保衛員が救い出そうとしても、どうしようもないとのことだ。

情報筋の知人は、カネを借りるためにブローカーに電話したが通じず、自宅を訪ねたところ、もぬけの殻になっていたのを目撃したという。人民班長(町内会長)が地元の朝鮮労働党委員会に問い合わせたところ、「国家保衛省により奥地に追放された、もう探すな」と言われたとのことだ。

管理所(政治犯収容所)や教化所(刑務所)よりはマシだが、山間へき地では食糧難の中でいっそう苦しい生活を強いられる。正直であることは命取りとなるのが北朝鮮なのだ。