北朝鮮の住宅法は、37条で次のように定めている。

公民は住宅を利用し引っ越しする場合は、住宅利用許可証を返還しなければならない。既に利用していた住宅の利用許可証を返還せずに他の住宅の利用許可証を受け取ることはできない。

つまり、1世帯あたり1戸以上の住宅を利用してはならないということだが、北朝鮮の不動産市場はこの法律を無視し、利用許可証を売買する形で形成されてきた。それに対し、当局がストップをかけたのだが、自分で自分の首を絞めることとなっている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党平安北道委員会(道党)は、国が定めた1世帯1住宅の原則に反する行為を非社会主義的行為とみなし、法的に処理すると宣言した。そして今月3日から、新義州(シニジュ)、定州(チョンジュ)、亀城(クソン)の各市と義州(ウィジュ)郡において、すべての世帯の調査を行い、住宅利用許可証の所有と、住宅利用の適正如何について調べている。

年末の総和(総括)に向けて、住宅の利用実態を具体的に把握し、正常でないものがあれば、反社会主義・非社会主義連合指揮部に引き渡して捜査を行う方針だという。

中でもターゲットになっているのが、複数戸の住宅を所有しているケースだ。新義州などの都市部では、両親と同居しているのに、わざと別々の世帯に分けて2戸を利用するケースについて集中的に調査を行う方針だ。

さて、頭を抱えているのは取り締まる側にいるはずの地方の党・政府の幹部だ。複数戸を所有していることがバレれば、非社会主義行為を行った疑いで取り調べを受け、下手をすると奥地への追放や教化所(刑務所)行きになるかもしれないからだ。住宅が没収されるのは言うまでもない。

不動産投資を行ってきたトンジュ(金主、ニューリッチ)も困っている。新義州には、トンジュの投資で建てられた高層マンションが立ち並んでいる。また現在はペンディング状態とは言え、金正恩総書記が2018年にぶち上げた再開発プロジェクトで、大儲けできるチャンスが到来するかもしれないという淡い期待があったが、それが潰されることになるからだ。

また、複数の住宅を所有し、家賃収入を得ていたトンジュも少なくないだろう。

「もっと広い住宅に住みたい」という夢を叶えた人々からも不満の声が上がっている。

「以前から1戸の家に暮らしていた家族が、2戸の家に分かれて楽に暮らすライフスタイルを選んだのに、それすら問題視して家を奪おうとするのはやり過ぎだ」(情報筋)

そんな不安や反発の声に、道党は「わが国(北朝鮮)では、住宅所有権はすべて国にあり、個人には利用権のみ認められる」として、違法行為に関して国が取り締まりのは当たり前という立場を明らかにしている。

また、当局は没収した家を住宅問題で困っている人に割り当てる計画で、優先対象として朝鮮戦争戦死者の家族、除隊軍官(将校)に、科学者、愛国功労者、炭鉱労働者などを挙げている。

そんなやり方に「国が法的根拠を振りかざし、住民から住宅を取り上げて別の問題を解決しようとしている」と批判の声が上がっている。

今回の措置の背景には、不動産取引を禁止する国の方針があると思われるが、取り締まる側と取り締まられる側がある程度一致することから、どれほど実効性があるかが注目される。見せしめ的に、一部のトンジュから家を取り上げて、大々的に宣伝するだけに終わる可能性も考えられる。