北朝鮮の首都・平壌の市民と、中国と国境を接する北部両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)の市民2人が、内部機密を流出させた容疑で、国家保衛省(秘密警察)に逮捕された

両江道のデイリーNK内部情報筋によると、40代の平壌市民のハム氏と、50代の恵山市民のパク氏は、2020年2月から今年10月まで、結託して周期的に内部機密を流出させ、内乱陰謀を図った容疑で、今月11日に国家防衛省に逮捕された。

有罪が確定すれば、最高刑は死刑である。

家宅捜索の結果、ハム氏の自宅からは巨額の米ドル、携帯電話4台が見つかり、パク氏の自宅からは米ドル、中国人民元、携帯電話2台、中国キャリアの携帯電話2台が見つかった。

ハム氏は、平壌の政府機関と平壌市内で起きた事件や事故、幹部事業(幹部の人事)、1号行事(金正恩総書記が参加する行事)に関する情報を、有線電話や携帯電話を使って恵山のパク氏に伝え、パク氏が国外に流出させていたという。

ただし、情報筋は「今回逮捕された彼らが本当にスパイをしていたか、誰にわかるものか」として、国家保衛省がスパイだと言ったらスパイ扱いされる現実の中、彼らが実際に何を行っていたかはわからないと述べた。

自宅から多額の外貨と複数の携帯電話が見つかったことから、中国や韓国に住む脱北者が、北朝鮮に残してきた家族に送金した現金を伝達する送金ブローカーだった可能性があるということだろう。実際、送金目的で海外と通話していてスパイとして摘発される事例はいくらでもある。

ただ、パク氏が逮捕直後に地元の保衛局(秘密警察)で取り調べを受けることなく、すぐに平壌の国家保衛省に身柄を移されたことから、「当局は大事件と見ているようだ」と、情報筋は伝えた。

情報流出が事実ならば、当局が最も問題視するのは、最高級の国家機密である金正恩氏の動向に関するものだろう。ただ、そんな情報を一般市民が得ることは不可能だ。地元の幹部と何らかの関係があった可能性も考えられる。

今回の事件を受けて国家保衛省は、平壌市保衛局に、平壌市民が国境沿いの地域に住む住民と通話する場合、ランダムに選んで一部を盗聴するのではなく、全数を盗聴し、平壌の実情を少しでも漏らした場合には、職位、出身、理由を問わず、処罰せよと指示した。

また、両江道保衛局には、国境沿いの地域において国内の機密情報が海外に流出することのないように、中国キャリアの携帯電話の違法使用者に対する統制と監視を今の10倍に強化し、スパイや不純異色分子の割り出しに総力を尽くせと改めて強調した。

情報筋は、数年前から平壌を含めた内陸地域と、国境沿いの地域の通信に対する盗聴が強化されたが、今回の事件で今まで以上に強化されると見ている。

別の情報筋は先月1日から15日の間に、国家保衛省10局(電波探知局)が、恵山と三池淵(サムジヨン)など国境沿いの地域に設置された電波探知機を最新型のものに取り替える作業を行ったと伝えている。

ただ、現地住民の間からは「実際の性能より誇張されているのではないか」と疑いの声が上がっている。実際、置き換え作業が終わって以降、中国キャリアの携帯電話を使った容疑で逮捕された人の数は多くなく、ユーザーは緊張しつつも使用を続けているとのことだ。