バイデン米大統領は4月26日、米韓首脳会談後の記者会見で「北朝鮮が米国やその同盟国、パートナーに核攻撃を行うことは受け入れられず、そのような行動を取った場合、いかなる政権でも『政権の終末』を招くだろう」と述べた。この言葉が北朝鮮の指導部をいたく刺激したようで、これに対する「復讐決意大会」が北朝鮮各地で行われている。

以下は、国営朝鮮中央通信が8日に配信した記事だ。

各道・市・郡勤労者団体組織で復讐決意集会、弾劾集会

【平壌5月8日発朝鮮中央通信】希世のギャング国家、悪の帝国である米国と同族対決に狂ったかいらい逆賊一味を断固と懲罰するための各道・市・郡勤労者団体組織の復讐(ふくしゅう)決意集会、弾劾集会が引き続き行われている。

全国の青年学生は、復讐決意集会を開き、わが共和国に向かって「政権の終焉(しゅうえん)」という狂的な妄言を吐き、反朝鮮核戦争騒動に狂奔する米帝侵略者と米国の特種手先、特等逆徒であるかいらい逆賊一味を峻烈(しゅんれつ)に糾弾した。

青年学生は、父なる金正恩元帥が命令だけ下せば、500万の青年前衛は反米、対南対決戦の先頭に立って朝鮮青年の不屈の気概と勇猛を余すところなく宣揚し、侵略者、戦争狂と最後まで決着をつけるという誓いを立てた。(後略)

北朝鮮第2の都市、咸興(ハムン)でも6日、復讐決議大会が開かれたが、参加者は「心ここにあらず」と言った様子だったようだ。咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

咸興では、青年同盟(社会主義愛国青年同盟)の咸興市委員会、各区域の委員長、初級団体の委員長や青年、学生が参加した復讐決議大会が50分にわたって行われた。

その場では「同じ空の下では暮らせない不倶戴天の敵」「米帝と南朝鮮(韓国)傀儡一味を消滅させよう」などと言った演説形式の討論が続いた。これを眺める若者らの反応は、「昔から言ってたことをまた言ってやがる」と言った冷めきったものだったという。

暇を持て余した彼らは、友人とじゃれ合ったり、シュプレヒコールには口パクで応じたりするなど、不真面目そのものだったという。また、こんな不満の声も漏れ聞こえたという。

「米国は我々よりもっと発展した核兵器を持っていながらも、いい暮らしをしている。軍事強国だ核強国だと宣伝しているわれわれは核兵器でも劣り、国民は粥をすすることすら難しい。疲れるばかりのこんな集会をしたところで何が変わるというのか」(情報筋)

北朝鮮は、メディアや組織を総動員して、米国や韓国への敵愾心を煽るのに必至だが、若者たちには全くといっていいほど効いていないのだ。

「今の若者は組織生活を本当に嫌がり、米国と南朝鮮の映画にすっかり慣れた世代だ」(情報筋)

北朝鮮の若者は、集会や建設現場への動員、思想教育の場への参加などの組織生活を嫌い、プライベートを優先する。北朝鮮では「個人主義」と批判される行為だが、それが当たり前の世代なのだ。仮病を使ってサボったり、ワイロを渡して参加を免れようとしたりする。

もちろん、この手の集会を嫌がっているのは若者だけではない。中高年層も、参加しなければ思想的に問題があると疑われかねないため、とりあえず参加はするものの、私語に夢中になったり、居眠りしたりする。韓国や米国を「不倶戴天の敵」呼ばわりし、ヒステリックになじることそのものが古臭く感じるのだ。情報がなかった昔とは異なり、北朝鮮の人々も、今では米国と韓国の現実を知っているのだ。