米国務省報道官は先月22日、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「脱北者は強制送還後に、拷問、性暴力やジェンダーに基づく暴力、強制労働、処刑の対象となることが知られている」と述べた。

これは、「経済的に理由で違法に入国した北朝鮮出身者は難民ではない」「送還後に人権侵害に遭っているという証拠はない」とし、強制送還を正当化している中国政府の主張に反論したものだ。強制送還された脱北者が、北朝鮮政府により様々な苦痛を強いられているのは公然の秘密である。

北朝鮮当局が脱北に失敗した人々に苦痛を与える方法には、われわれの常識ではついていけないものがある。

北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)は、中朝国境地帯と近いことから、脱北を試みて逮捕された人が多く収容されている。

現地の情報筋は韓国デイリーNKの取材に対し、こんなエピソードを明かしたことがある。

「海外から強制送還された1人の若い女性が栄養失調になったため、教化所当局は彼女を食堂勤務に移した。しかしそれは、残飯でも与えて栄養を摂らせようというような『配慮』からの措置ではなかった。『食べ物のにおいでもかいで生きてみろ』ということだったのだ。この女性は間もなく死亡してしまった」

教化所当局が、何を目的にこのような措置を取ったのかは詳らかでない。おおかた、他の収容者に対する「見せしめ」のつもりだったのだろう。

何が目的であったにせよ、飢えている人間に食べ物を与えず、においだけをかがせるという行為はきわめて非人道的なものだ。

中国政府はこうした行為の「証拠がない」というが、仮に何らかの証拠が提示されても「ねつ造だ」と言い張るだろう。新疆ウイグル自治区や香港の人権問題をめぐり、国際的な批判への反発を強めている今ならなおのことだ。

しかし、北朝鮮の独裁体制がいつまでも続くとは限らない。いずれ同国内に検証の手が入り、人権侵害の証拠が暴かれたときには、中国は共犯者として断罪されることになる。そうした不名誉を甘受する気がないならば、脱北者の強制送還を止めるべきだ。