昨年11月、大阪で行われた新入団選手トライアウトでのことだ。坂口裕昭リーグ事務局長が「関東にね。面白いヤツがいたんですよ!」と話し始めた。

 東京学芸大の学生が高松の出身で、会場にいた近藤智勝コーチ(香川)や梶田宙社長(高知)、香川OB・生山裕人氏(元ロッテ)らの名前を次々に言い当てたのだという。

 「アイランドリーグは子供のころから見てて……」

 梶原直景がそれを知ったのは、母・久美子さんが理学療法士として勤務する病院に、当時の香川のエース・塚本浩二(元ヤクルト)が治療に来ていたことがきっかけだった。香川戦を中心に試合もよく見に行った。

 中学時代に所属していた高松ボーイズでは、オフシーズンになるとアイランドリーガーと一緒に練習することがあった。

 「いろんな経歴のすごい人たちがいて。やってみたら高校生とは全然違う。技術もありますし、教えてもらうときの言葉も、その辺の指導者とは全然……」

 将来、高校野球の指導者になりたいと大学へ進学する。だが、教師の道も簡単ではなく、卒業を前に臨時教員として正規採用を目指すか、独立リーグに挑戦するかの選択に迫られた。まだ野球をやりたい気持ちが残っている。トライアウト受験は人生の分岐点だった。

 アイランドリーガーとなったいま、新たな可能性が広がりつつある。

 「勉強の時間がなくなったので、ずっと野球のことを考えられる。成長のスピードが上がってますね」

 これまで140キロ以上の球を打つことなど、ほとんどなかった。ここでは140キロどころか、150キロの球とも真剣勝負できる。対阪神2軍戦(17日、鳴尾浜)でメンデスから打った右前安打も「高知の外国人投手と対戦している経験が生きた」と話す。

 「見逃しをしない。振っているほうが後々の成長になると思う。ここでは難しくても挑戦する。しっかり振っていく。そして、あとで反省する。その繰り返しです。反省して、練習して」

 前期は打率3割を超えた。さらに経験と自信を身に付け、香川を代表する選手に。(スポーツライター・高田博史)