先日、飲食店を営んでいた父が急逝しました。父は10年前に店を立ち上げた際、銀行から2000万円の借金をしていたようです。返済は着実にしていたようですが、まだかなりの額が残っています。母と一人息子の私は残った借金を返さなければならないのでしょうか?(20代男性、会社員)

 母親とあなたが父親の残された借金を返さなければならないかどうかは、父親の相続をするか否かによります。

 飲食店を引き継いで営んでいかなければならない事情があるなど、相続をせざるを得ないということであれば、残された借金も相続をすることになり、借金を返さなければならなくなります。

 一方、そのような事情も特になく、借金の返済を免れたいということであれば、相続人である母親とあなたは、相続放棄の手続きを家庭裁判所で取る必要があります。

 相続放棄の手続きを取れば、負債などのマイナスの財産を引き継ぐ必要はなくなりますが、プラスの財産(残された預金など)も一切引き継げなくなりますので、その点は注意を要します。

 この相続放棄の手続きを行うにあたって、知っておくべきことを以下挙げます。

 まず、相続放棄の手続きは、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行う必要があることです。

 ただし、相続放棄をするかどうかの判断にあたって、残されたプラスの財産と負債などのマイナスの財産がどれくらいあるかを把握するために時間を要する場合があります。この場合、3か月以内に相続放棄をするかどうか判断が難しいこともありますが、その時は、家庭裁判所にこの3か月の期間の延長を求める手続きを取ることができます。

 次に、相続人が、相続放棄前に相続財産を処分したり、プラスの財産を一部引き継いだような場合には、相続を承認したものとみなされるということです。例えば、相続放棄をする前に、相続預金を引き継いだり、残っていた売掛金を回収して収受したりしたような場合には、相続を承認したものとみなされ、残った借金の返済を拒めなくなるおそれがありますので、注意を要します。

 最後に、相続放棄と生命保険金の関係です。生命保険金は保険契約に基づく受取人固有の権利であり、生命保険金は相続財産ではありません。したがって、生命保険金を受け取っても、相続放棄をすることは可能です。

 森本明宏(もりもと・あきひろ)1973年生まれ、45歳。愛媛県松前町出身。松山東高から大阪大法学部に進み、2000年に司法試験合格。02年に弁護士会登録。現在、四季法律事務所(松山市)代表弁護士。愛媛弁護士会民事介入暴力対策委員会委員長。