今季からJ1徳島を率いるダニエル・ポヤトス監督(42)が、本紙独占インタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で来日が大幅に遅れ、リモートでの指揮を強いられ、開幕戦にも間に合わず、苦難の船出となった。ようやく来日できてから約2カ月半、5勝4分け9敗13位につけるチームの現状と、今後のリーグ戦、そして日本に対する思いを聞いた。

 −来日から2カ月半、日本には慣れたか

 「毎日少しずつだが生活に慣れてきた。日本語も少しずつ使いながら学んでいる」

 −何か覚えた日本語は

 「日本語は私にとってとても難しいが、グラウンドの中で選手とコミュニケーションを取るため、指示を出すため、『正確に』や『右』、『左』などは覚えた。買い物などでも簡単な日本語は使っているが、やはり自分にとっては難しい」

 日本のサッカーへの順応は

 「日本に来た当初から感じていることだが、日本では組織立った戦術の中でリズムを重要視するところがある。ヨーロッパでもその側面はあるが、より戦術的で、組織立った攻撃や守りがある」

 −監督自身の好みとしては

 「自分のサッカーで1番大事なのは組織立って戦っていくこと。試合運びやリズムはわれわれの指示でも変えられると思っている。徳島スタイルとして、いいオーガナイズ(組織力)で、いいリズムをもたらすことを目指している」

 −就任会見で以前から日本で指揮を執ってみたいと発言していたが、何かきっかけが

 「2015年頃、日本で仕事をしていたことがある。大学、高校、中学のチームにサッカークリニックという形で指導をしていた。Jリーグの試合も観戦してレベルの高さを感じたし、同時に学ぶスピード、何か一つを教えたらそれを学んで実践してくれるスキルがすごく高いとも感じた。そのときからすごく注目しており、ヴォルティスからアプローチがあったときにも即決することができた」

 −当初は来日がかなわず、リモートでの監督業だった。振り返ると

 「チームに関する全ての情報を日本からもらい、こちらのアイデアをどうやって正確に伝えていくか。どのようにプランを作っていくか、というところで学ぶことがすごく多かった。伝えたいことを手短に、正確にまとめることも学んだ」

 −それは成功したか

 「やはり、監督はグラウンドの中で指導するのが大前提。正直に答えさせてもらうと、(オンラインで)全てをうまく行うことは不可能だった。全てを伝えるのは難しい。サッカーは団体競技であり、チームとして一緒にいて、直接伝えることがすごく大事。オンラインで自分のアイデアやフィロソフィー(哲学)は伝えたが、全ては難しい」

 −来日前のイメージと来日後で選手の能力などに差はあったか

 「技術的な部分はビデオで見てわかっていた。だが、彼らがいつ、どんなテクニックを使うのか、そして状況判断をするのか、という意味での特徴は日本に来てからつかんだ」

 −徳島というチームの雰囲気をどう感じる

 「一体感があり、ファミリーであると感じる。人間性に目を向けても良い環境だと思う」

 −4月17日の鹿島戦で日本初采配を執ってから1勝5敗2分け。この数字はどう受け止めているか

 「まずわかってもらいたいのは、私の中では開幕からチームを率いていると認識していること。鹿島戦はセットプレーや、動きが止まった時間でやられていたことが改善点。過密日程により、練習して積み重ねていくことが難しい状況ではあるが、その中でチームとして良い方向に進んでいる」

 −約3週間の中断期間で取り組もうとしたことは

 「三つ挙げられる。一点目はどうやって組織立ったディフェンスをしていくかに重きを置いた。二つ目はセットプレー。J1で戦っていくにはそこでやられるわけにはいかないし、攻撃においてもすごく重要な要素になる。三点目は最後のアタックの部分。リーグ戦もルヴァン杯でもかなり自分たちがボールを握る時間は長くできている。後はどのように崩していくか」

 −手応えは

 「チームは確実に良くなっている。先日の天皇杯(9日・対高知SC、2−1)で勝利できたことはすごく大きい。相手は下のカテゴリーだが、しっかりボールを握りアグレッシブに組織立って戦えた。もちろんまだまだ時間が必要で、改善点はあるが、微調整しながらこのまま進めていきたい」

 −23日のFC東京戦でリーグ戦が再開

 「FC東京は、予算を含めリーグ制覇する力があるチーム。いいブラジル人選手もいる。ひとりひとりを分析し、しっかりと試合をコントロールし、相手の弱点がどこにあるのか探り、そこをついていきたい」

 −普段は自宅でどう過ごしているか

 「ほとんどの時間はこの練習場にいるが、自宅では家族と連絡を取ったりして過ごしている」

 −自炊したりするのか

 「スペインでは妻とも一緒に作ったりもしますし、料理をするのは大好き。イタリアやスペイン料理を中心に、たいしたものはできないけど。パエリアは私の好物。日本食も作ってみたいがそこまでたどり着けていない。先日はトルティーヤ(スペイン風オムレツ)を作った」

 −趣味は

 「すごく時間があるときはギターを弾く。仕事でたくさんのことを考えるので、そこから頭を切り離す時間になる。徳島の家にはまだないが買いたいと思っている。フラメンコを弾いてみたいけれどなかなか難しい」

 −日本で好きになったものは

 「日本人には他人をリスペクトする気持ちをすごく感じる。そこにエゴイズムはなくて、全員で一つのものを解決しようとする。そこはすごく自分がいいなと感じる部分」

 −自分の性格はどう分析する

 「自分で言うのは恥ずかしいが、正直で働き者だと思う。困っている人がいたらいい手助けをしたい、手を差し伸べたいという気持ちで満ちあふれている。場所も環境も関係なく、どこにいても一生懸命取り組んでいく。特にサッカーの分野でいうならば、常に選手のそばにいてあげたいと思う」

 −性格的な部分で日本と合っているのかも

 「自分自身も日本にいてすごく気持ち良いというか、何の不自由もなく落ち着いた状態でいられる。後は早く家族が日本に来て欲しい。そしたらもっともっと日本での生活は良いものになる」

 −やはり寂しいか

 「本当に寂しい。正直に言わせてもらいたい。日本人の家族に対する価値観、考え方というのはわからないが、スペインでは妻と家族と、常に一緒にいてより近い存在となり、何事も全て分かち合うものだと思っている。少なくとも私にとっては。グラウンドにいるときはそのことを忘れ、最高の環境でやらせてもらえているが、家に帰り、ふと1人の時間ができたとき、正直めちゃくちゃ寂しくなる。私だけでなくJリーグやスポーツ界において、外国人選手に起こっている問題について、心から、早急に政府の方々に解決をお願いしたい」

 ダニエル・ポヤトス 1978年6月23日生まれ、スペイン出身。08年にスペイン1部エスパニョールの下部組織で指導者としてのキャリアをスタート。アトレティコマドリードコーチやレアルマドリードU−19監督を歴任し、20年はギリシャ1部パナシナイコス監督を務めた。